小説


第1話 「So Lucky?」 (コメディ?)

 藤壷( ふじつぼ浮竹(うきたけはあたしの親友。
 あたしたち3人はいつも一緒。
 休み時間も、お昼も、部活も、放課後も。
 入学してすぐ、あたしたちは3人そろってテニス部に入った。
  言いだしっぺはあたし。
  内緒にしていたけど、男子キャプテンの
夜鷹木内雅彦(よたかきうちまさひこ)先輩に近づきたくって、テニスを選んだのだ。
 夜鷹木内( よたかきうち)先輩は、超イケメンの男子キャプテン。
 生徒会長もやってて、成績も学年トップで、誰も文句をつけられない学園のアイドルだった。
 でも、そんな人を好きになったなんて、なんだか恥ずかしく、藤壷と浮竹にさえ言えなかった。
 なのに、二人も、
「キャプテンの
夜鷹木内(よたかきうち)さんって、素敵だもんねぇ」
と、言い出し、
「部活、やる気でるよね」
「テニスに決まりだね」
と、あっさり入部を決めた。
このときに素直にのっていれば、楽だったのに。
「二人とも不純だ。あたしは先輩のことなんかぜーんぜん……」
思わずそんな言葉がこぼれてしまった。
「純粋にテニスやりたいだけだよー。先輩なんて興味がないわ」
 うわー バカだ、あたし。
「んじゃ、まゆはどんなのが好みなのよ? ため? 年下?」
「ん〜 なんでもいいよ」
「同じクラスの
上中屋敷(かみなかやしき)ヒロシなんてどうよ?」
「いいんじゃない? 先輩ほどじゃないけど、あれもなかなかよ。 サッカーうまいんだって」
「勘弁してよぉ。
夜鷹木内よたかきうち上中屋敷かみなかやしきも好みじゃないってば! あー 舌かみそう」

 けれど、日に日に
夜鷹木内(よたかきうち)先輩への気持ちが募っていった。
 どうせ叶う相手じゃないし、自分から先輩のことを口にすることはなかったけど。

 それでも、あたしたち3人はいつも一緒。
 泣いたり笑ったり、3人で過ごす時間はかけがえのない宝物だった。

 でも、それは昨日までの話。そう、過去の話。
 二人は突然、あたしを避けるようになった。
 なぜだかさっぱりわからない。
 完無視されるわけじゃないけど、妙によそよそしい。
 あたしが行くと、突然話を中断し、黙り込む。
 目を見ない。そそくさと散っていく。
 なんでなんでなんで!?
 言いたいことがあるなら、はっきり言ってよ!
 寂しくてたまんない。泣きそうだよ。

 放課後。
 部活に顔を出すと、右側のコートで藤壷と浮竹は二人組みになり、ストレッチをしていた。
 その反対側には、黒いひとだかり。
 中心は
夜鷹木内(よたかきうち)先輩。
 先輩の熱狂的なファンが群がっているのだ。
 藤壷と浮竹には近づかず、と言って
夜鷹木内(よたかきうち)先輩の取り巻きに混ざるなんてできず、あたしはコートの隅で素振りをはじめた。
 ラケットが重く感じる。気持ちが重いからかな。
 ところが、すぐに誰かが呼ぶ声。
「まゆー! なんやってんの? こっちにおいでよ」
え?
 ふと見ると、
夜鷹木内(よたかきうち)先輩が手を挙げている。
 こっちを見てる? でも呼んだのはまさか、先輩じゃないよね。
 と思ったら、
夜鷹木内(よたかきうち)先輩は両手を振って、もう一度叫んだ。

「おーい、まーゆぅぅぅーーー」

 ええええええーーーーー!!!!
 はぁぁぁぁぁーーーーー????
 ちょっ どういうことー?!?!

 先輩があたしに声をかけるなんて、ありえなかった。
 しかも、『まゆ』?! なんで呼び捨て?!

 夜鷹木内(  よたかきうち)先輩は突然駆け出し、真っ直ぐにあたしに向かってきた。
 そして、跳び箱でも飛ぶように両足で踏み切り、ジャンプ。いきなりあたしに抱きついた。
 コートの中にいた全員が、きゃああああ! と、悲鳴をあげた。
「ひぇぇぇーーー」
「まゆ、来てくれないから、僕が来たよ」
「せ、先輩?」
「放課後が待ち遠しかった。会いたかったよ」
 なんじゃこりゃあああああ!!!

 すると、藤壷と浮竹が腕組みをして、近づいてきた。
「やっぱりね、噂は本当だったんだ」
 藤壷はそう言いながら、あたしをにらみつけた。
「あたしたちを出し抜いて、
夜鷹木内(よたかきうち)先輩とつきあうなんて」
 浮竹もかぶせるように言う。
「親友のあたしたちにまで隠れて、コソコソと。最低」
「そ、そんな! 誤解よ」
 確かに好きだってことは隠してた。でも、つきあってるなんて。
 すると、先輩は私を抱きしめたまま、キリッとした目で二人を見、
「君たち、まゆに近づかないでくれたまえ。今後、この子に手を出すようなことがあったら、僕が許さない」
 夜鷹木内(  よたかきうち)先輩……何言ってるすか?!
 いつからあたし、先輩と?
 親友たちが誤解しちゃってる! 困ります!

 でも、でも、魚みたいに口だけパクパク。
 声でないっ

 なにがなんだかわかんないけど……とりあえず、二つだけわかった。
 一つは、藤壷と浮竹の態度か変だった理由。
 そしてもう一つは、
夜鷹木内(よたかきうち)先輩もあたしのことを……
 先輩……いい匂い。
 突然力が抜け、先輩の腕にだらんと寄りかかった。
「まゆ……」
 先輩の顔が近づいてきた。
 ひぃぃぃーーー まさかーーー うそぉぉぉーーー
 全身の血が逆流。熱があがる。溶けちゃいそう。
 でも、でも……これは、あれだ。
 キスだ。キスされる。
 それならあたしも、目を閉じなきゃ。
 心の中で叫ぶ。よたかきうちせんぱぁぁぁーい!
「僕は君をあいし……」

 ジリリリリリリリ!

 目覚ましの音に、私は跳ね上がるようにベッドの上に半身を起こした。

 なんだ、夢だったのか。

 クスクス、笑いがもれる。

 すると、
「おはよう。なに笑ってるの?」
 隣から眠そうな声。
「夢みてたの。高校生だった頃の」
 私はもう一度横たわり、まだ目を閉じたままの夫の胸に、そっと頬を寄せた。
「高校か……懐かしいな」
「あなたとつきあいはじめた頃の夢よ、雅彦」

                         第1話  おわり




 

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プロフィール

Name
小宮山蘭子
Birth day
9月2日(おとめ座)
Blood type
Address
長崎
☆☆☆
小説投稿サイト「小説家になろう」を中心に作品を発表★『華神』にて公式企画「夏のホラー2009」人気投票1位★『嘘つきカレン』にて企画「犯罪が出てこないミステリー」大賞(2009)★『月を産む』長崎新聞掲載(2000)
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