長編小説

第一章「仮契約」
第三話「夏音の大親友」

SorcerySpell

夏音の親友登場。通学風景。日常です。

 屋敷の外に出るとそこにはご機嫌斜めな夏音が立っていた。
「ごめん。待ちました?」
 と僕が聞くと、
「遅い!遅いわ!女の子を待たせるなんて紳士失格ね!」
 なんて訳の分からない答えが返ってくる。この仁王立ちをしている少女は夏音だ。少し茶色がかった髪。ちょうど肩のあたりまで伸びている。そして瞳は茶色で大きく、くりっとしていて可愛い。白と紺のセーラー服を身にまとっている。子供っぽい行動を控えればちゃんと高校生に見えるだろう。
「いや・・・・・そんなに待たせていないと思うんですけど」
 無駄と思いつつ、僕は夏音に反論する。すると、夏音はフッと鼻で笑う。まるで勝ち誇ったように。
「甘い!甘いわ!チョコレートケーキに蜂蜜をかけたくらいに甘いわ!!」
 夏音は僕に人差し指をビシィと向けた。僕は夏音の勢いに押されて一歩身を引く。・・・・・・というか、チョコレートケーキに蜂蜜って・・・・。
「私にここで待たせている時点であなたの負けなのよ!」
 ・・・・・訳わかんないです。というかいつから勝負に?と僕が苦笑していると、夏音が手をポンとあわせた。まるで『いい事を思いついた』というように。物凄く嫌な予感がする。
「そうだ!今日から一週間、あんた荷物持ちね!よろしく!」
 夏音が元気一杯に持っていた荷物を僕に差し出す。・・・・・・これが狙いですか?
「意味わかんないです。というかいつその罰が決まったんですか!?それに勝負なんてしていませんよ!!」
 突っ込みどころが多くて疲れると僕がため息をつくと、夏音があっさりと言う。
「いいじゃない。別に。男でしょ?男なら女の子に優しくしなさい!」
 出た。夏音のご都合理論。これが出たらもう諦めるしかない。これがくつがえるなんてあり得ないのだから。
「夏音様の仰せのままに」
 僕は諦めたような声音でそう言うと夏音の荷物を持った。
 夏音はふと思い出したように僕は質問する。
「そういえば、あんたあの『幽霊屋敷』に住んでいるんだよね?」
 『幽霊屋敷』、それはイクスが今住んでいる屋敷の事で見た目がかなりアレ(雰囲気からして陰気的でいかにもホラー映画に出てきそうなくらい)なのでいつのまにか幽霊屋敷と呼ばれるようになってしまった。と言ってもそれは約一ヵ月半までの話。イクスが住み始めた頃からいきなり、普通に立派な屋敷になった。これはこれで不気味な話だろう。何せ、『いきなり』なのだから。
「ええ。そうですよ」
「そうよね・・・・・。でも、あの屋敷の改装工事をしている所を私、見た事がないのよ」
 夏音が素朴な疑問を僕にぶつける。僕はさらりとまるで天気の話をするような軽さで言う。
「そりゃあ・・・・・・。そうでしょう。だって魔法で直しましたから」
「は?」
 夏音は耳を疑った。『魔法』で?オイオイ、常識はずれもいい加減にしてよと夏音が心の中でつっこむ。もちろん、夏音の表情は引きつっている。これは面白いと僕が内心思っていると、夏音が腕を組んでう〜んとうなる。
「あんたさ・・・・・。一般常識って知ってる?勉強しなおしなさいよ」
 夏音のひどい言い草に僕は苦笑する。夏音は僕をじとっと睨みつけた。
「この非常識人間め」
「夏音ちゃんは人の事言えないでしょ?」
 僕が反論しようとした時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「呉羽さん。おはようございます」
 イクスに『呉羽さん』と呼ばれたこの少女、実は夏音の大親友で演劇部の部長らしい。長い黒髪が美しく、腰のあたりまで伸びている。瞳は黒曜石のように美しい。一言で言ってしまえば『お嬢様』って感じの人だ。まぁ・・・・・本当のお嬢様なのだが。
 名前は天音 呉羽(あまね くれは)。夏音とイクスのクラスメイトでもある。
「おはよう。イクス君に夏音ちゃん。相変わらずラブラブね!」
 のほほんとした雰囲気でとんでもない事をさらりと言う。
 夏音は顔を赤くしてあたふたと慌てた。別に慌てなくても・・・・・。
「なっ!?こいつとラブラブなんてしていないわよ!?」
 夏音が顔を真っ赤にして反論する。全然説得力がない。
 呉羽さんはくすりと笑う。
「夏音ちゃん。かっわいいv」
 本当にいい性格をしている。流石夏音の親友だ。と感心しながら僕は呉羽さんに質問をする。夏音が怒りで爆発したらいろんな意味で大変だからだ。
「呉羽さん、今日徒歩ですか?珍しいですね」
「うん。そうだよ。久しぶりに夏音ちゃん達と一緒に学校行きたかったし」
 とそこで夏音が割って入ってくる。とても不機嫌に見える。
「はぁ?毎日会っているのに何言ってんのよ?頭、大丈夫?呉羽」
 夏音の言葉に呉羽さんは頬を膨らませた。
「何よ〜。いいじゃないの。あ!それとも〜」
 呉羽さんは何かに気付いたらしく、意地の悪い笑みを浮かべた。
 夏音は何かを感じ取ったらしく身構える。
「うふふふ。そっかぁ・・・・・。夏音ちゃん。イクス君と二人っきりの時間を邪魔されたくないのね♪」
 爆弾発言。
「「は?」」
 夏音と二人で固まった。すぐさま夏音は呉羽さんに反論する。顔を真っ赤にして。
 夏音はすぐ顔に出るから可愛いですね・・・・・・。でもなぜあんなに顔を赤くするのでしょう?やっぱり人の心は分からないな・・・・。と僕は心の中で思った。そして夏音と呉羽さんの様子を微笑ましく見守る。




―やっぱりこの人達は巻き込めないですね・・・・・・・。・・・・・僕の大切な友人達なのですから・・・・。

  夏音たちは気付かなかった。イクスの自分達を見る目に悲しみの光が宿っている事に。
それも仕方のないこと。何故ならイクス本人ですら気付いていないのだから・・・・。













後書きという語り
 イクス君はね・・・。自分の感情に疎い子なんです。そして夏音は正直者(笑)。

6/6