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【お題小説】


3.そんなに泣かないでください、理性が保てなくなる。

数日前のあの日。
その日は、雨がとても強く、今だ帰らない彼女の携帯に何度も連絡していた。
普段ならば気にも止めないのだが、その日は本当に豪雨と呼ぶに相応しい天気だった。
だからいつもの時間に帰宅しない、彼女の心配もしたくなる。

落ち着き無く部屋を動き回っていると、玄関のチャイムの音がなる。
慌てて玄関へと向かうとそこには、びしょ濡れの彼女と、



「犬……?」


彼女が抱きかかえているのは、俺の知識が正しければ、子犬だ。
なんの犬種かは解らないが。

呆然と見つめる俺に、彼女はこう言った。
「今日ここに、新しい家族が出来た事を宣言します。」

そう言って、ニコッと笑った彼女は最高に可愛かった。



「で、なんで俺が世話してるんだ。」
数日前に妹が拾ってきた犬の餌を、なぜか俺が毎日用意している。
「え、お兄ちゃんの係でしょ。それ。」
さも不思議そうにそう言い放つ彼女は、我が妹ながら本当に…残念だ。

見た目は充分すぎるほどに可愛い。
実際、何度か町中でスカウトされた事も有ったし、こいつに好意を抱いてるやつなんて山ほどいる。
ま、俺が丹誠込めて可愛くしてやったんだから当然だけどな。
ただ、容姿に気を使いすぎたのか、性格の方が所々問題だ。
いや、もちろんそんな所も含めて俺の妹は可愛い。

「お兄ちゃん。散歩もよろしくね。」
「な!?それくらい自分で行けよ!」
可愛いのとコレとは別問題。
そもそも俺は動物好きじゃない。
にもかかわらず、世話を押し付けてくるこの妹は、本当に残念だ。

「だめぇ?」
急にこうやって可愛くなる…。
断れないじゃないか!!!
「し、仕方ねぇな。今回だけだかんな!」
「ありがと~。お兄ちゃん大好き!!」


「はぁ~。」
犬の散歩をしながら、大きな溜め息をつく。
俺の少し前を楽しげに歩く子犬を見て、言葉など理解しないと解りながら、話しかける。
「お前のご主人様はなんなのかね~。お前、本当はあいつに嫌われてんじゃないのか?」
俺の声にのみ反応して、子犬が振り向く。
「そんなことないですよね。知ってんよ、そんぐらい…。」
俺はまた、溜め息をつく。


翌日。
「お兄ちゃーん!」
居間から、妹が俺を呼ぶ声がする。
もちろん俺は喜んですっ飛んでく。
俺が居間の扉を開くと、妹がこう言った。
「餌無くなっちゃったってー。」
数秒の沈黙の後、俺は重々しく口を開く。
「で…?俺にどうしろと…?」
「だから、無くなったから容器に入れてあげて。」
「はい…。」
兄の権限って何ですか…?

餌が入った袋を取りに台所へと向かう。
俺が袋に手をかけると、妹所有(ここ重要)の子犬ちゃまが寄ってくる。
それも、ワンワン喚きながら。
相当腹が減っているらしい。
「お前…昨日の夜あんだけ食っててか…。」
子犬ちゃまは余計ワンワン五月蝿くなる。
俺…、そろそろ限界。



「お願いですから、そんなに泣かないでください、理性が保てなくなる。」



【お兄ちゃん、その手に持ってる包丁はなに?】



○あとがき○
誰も恋愛小説何て言ってないもん←
なんでこうなったかは、私も知らない。誰か教えて。
お兄ちゃんは妹大好きだけど、犬の世話は嫌。
でも可愛い妹にお願いされたら断れないのです。




お題配布元
【確かに恋だった】