【声を嗄らす程に】
本章
第一話〔はじまり〕
「由衣、この人がお前の母親になる、めぐみさんだ。仲良くしてくれ。」
そう言った、父親・康夫の横では、にこやかに笑う“母親”がいた。
”母親”は一歩踏みだし、由衣の頬に手を添える。
「よろしくね、由衣ちゃん。本当のお母さんには力不足かもしれないけど、仲良くしていきましょう?」
由衣はその言葉に微笑んで、
「はい、お母さん。」
そう言った。
一瞬、由衣が母親・めぐみの後ろに立つ康夫に目をやると、ホットしたように目を細めていた。
きっと、由衣が拒絶するという不安があったのだろう。
確かに由衣は、再婚すると聞かされたときに、驚きに目を見開いていた。しかし、それと同時に喜びもあったのは事実だ。
由衣は康夫にそのことを伝えていなかったから、心配を掛けていたのだろう。
「じゃ、母子の親睦はそろそろ一段落しようか。」
口元に笑い皺を作った康夫が、隣に立っていた少年の方を抱く。
「由衣、この子は大和君。お前と同い年だ。」
康夫の軽い紹介の後、大和と呼ばれた少年は軽く頭を下げた。
「二人とも難しい年頃だから、同い年の異性と一緒はイヤかもしれないけど、ちゃんと仲良くしてちょうだいね。」
冗談交じりの声でめぐみがそう言った。
めぐみの言葉に笑みを作りながら、由衣はもう一度、大和に目を向けた。
すると、大和と目が合う。
まさか向こうがこちらに視線を向けてると思わなかった由衣は、一瞬驚いて多少目を見開いてしまう。
自信の行動に、内心焦りながら、どうしようか考えを巡らせていると、大和が微笑んだ。
「俺、4月生まれだから、俺の方が年上だね。」
突然話しかけられた事に驚きながらも、由衣はなるべく笑おうと、言葉を返した。
「そ、そうだね。えっと、じゃあ、お兄さん……?」
「はは、それでもいいけどさ。出来れば名前で呼んでほしいな。」
そう言った大和の笑みに、自然と目を細めた由衣だった。
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