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【声を嗄らす程に】


第二話〔知らない事が沢山だから。〕

「ん…。」
昨日の夜にカーテンを閉め忘れたのか、窓から朝特有の光が入ってくる。
それに眩しさを覚えながら、由衣は瞳をゆっくりと開いた。
由衣はのろのろと起き上がると、瞳を眠たそうに擦りながら、階下に在る洗面所へと向かう。

ガチャっと音を立て、洗面所の扉を開けると、そこにはすでに先客の影があった。
「あ、おはよ。」
「おはよ…。」
由衣は反射的にそう応えるも、瞳は驚きに小さく開かれていた。
しかし、先客はそれに気付く事なく、壁にかかっていたタオルで顔を拭うと、さっさと洗面所を後にした。
(あ、そっか……。)
背後の扉が完全に閉じられた時、ふと昨日の事を思い出す。

昨日、由衣の実父である康夫が再婚したのだ。
その再婚相手であるめぐみが連れ子として、先程の先客・大和が由衣の(同い年ではあるが)兄としてこの家に越して来た。

はっきりと昨日の出来事を思い出した由衣は、先程の自身の反応に飽きれた様に苦笑しながら、顔を洗おうと、洗面台へと足を進めた。


洗面所をでて、一度部屋に着替えをしに戻ってから、由衣はリビングへと向かう。リビングへの扉を開けると、寝起きの身にもかかわらず、食欲をそそる匂いが漂って来た。
「おはよう、由衣ちゃん。」
リビングの扉を開けた由衣に気付き、めぐみは優しく笑いかけた。由衣はそれに自然と笑顔と言葉を返す。
めぐみに促され、朝食の用意された机の前に由衣は腰掛けた。隣には既に朝食を取り終え、食後にと、用意された紅茶に口を付ける大和がいた。
「休日だからって、起きるの遅くない?」
「そういう時もあるの。」
大和の言葉に、由衣はそう返すと、机の中央に置かれた食パンに手を伸ばした。
「大和、時間大丈夫?」
台所の方から聞こえて来ためぐみの言葉に、大和は確認する様に時計に目を向けた。
「あー、そろそろ行かないとね。」
大和とめぐみの会話をただ聞いていた由衣だったが、ふと気になり、大和に問いかける。
「どこかに行くの?」
「ん?あぁ、部活。サッカー部なんだ。」
「そうなんだ、頑張ってね。」
小さく微笑んで由衣がそう告げると、大和も微笑んで出て行った。


朝のあの時間から幾時間か経った今、そろそろ昼食の時間だろうか。そんな時間に、めぐみはいそいそと台所で何かは分らないが、準備を始めている。
由衣はそれが気になり、めぐみに問いかけた。
「さっきから何の準備してるんですか?」
由衣のその問いかけに、めぐみは手を休める事なく応える。
「お弁当の準備。ほら、大和が部活じゃない?なのにあの子ったら、今日の練習が午前中だけだと思ってたらしくって、さっきお弁当持って来てって連絡来たのよ。」
そういえば、先程確かに電話が鳴っていた。
それに由衣は納得しながら、見ていたテレビの電源を切る。
そして、改めて台所にいるめぐみに向き直り、弾んだ声で言った。
「お弁当届けに行くんですよね?私も行っていいですか?」