【声を嗄らす程に】
第三話〔先に気付くのは第三者〕
弁当を片手に、由衣は跳ねる様に歩いていた。その様子を、めぐみは一歩引いた場所から眺めていた。
「ご機嫌ね、由衣ちゃん。」
めぐみの言葉に、由衣は振り向いた。
「え、あ…。えっと、今日外出たくて仕方なかったんです。それに、大和の学校も見てみたいし。」
由衣は少し恥ずかしそうにそう答えると、また前を向いて歩き出した。
「あ、由衣ちゃん、ここよ。」
数分歩き続けていると、めぐみが校門を指差して、立ち止まった。由衣も立ち止まり、校門から見える校舎を眺める。
「えーと、校庭は向こうだったかしら…。」
校門の少し先にある段差の小さい階段を上りきり、めぐみは左手へと足を進めた。
少しすると、渡り廊下だろうか、頭上にのびる建造物が、この季節にしては珍しい暑い日差しを遮っていた。その下には、日陰でも分る程の日焼けをした少年たちが、楽しげに昼食を口に運んでいた。着ているユニフォームから見て、サッカー部だろうか。
「母さん!」
声がして、横にやっていた視線を反射的に前に向ける。すると、こちらに走りよってくる大和が見えた。
「サンキュー。土日って食堂開いてなくって、マジ焦ったわ。て、由衣も来たんだ。」
大和はめぐみから弁当を受け取りながら、由衣に視線を向ける。
「あ、大和、由衣ちゃん。私先生にご挨拶してくるわね。」
「ん。」
「はい。」
二人はそれぞれ返事をすると、めぐみの背中を見送った。
大和はめぐみから直ぐに視線を反らし、由衣に向き直った。
「ありがとな、わざわざ。」
「ううん、私は散歩したかっただけだから。」
「そっか。でも散歩がてらにしては、暑苦しいでしょ、ここ。ま、高校のサッカー部なんてこんなもんだけど。」
大和の言葉に、由衣は小さく声を上げて笑う。
するとその時、めぐみが話を終えたのか、戻って来た。それを合図に、大和と由衣は多少の別れの言葉を交わした。
「や~ま~と。」
由衣とめぐみの背中を見送り、友人たちがいる所へ大和は戻った。すると、先程まで弁当に夢中で食いついていた友人の一人である藤田が、大和の肩に腕をまわして来た。
「さっきの子だれよ?」
「え、あぁ、由衣?この間言ったじゃん?親が再婚したって。だから父親の連れ子。妹だよ、同い年だけど。」
「あれが、噂の妹ちゃんですかー。中々、可愛いじゃん。」
「やめろよなー。手出すなよ。」
藤田の軽口に、大和は苦笑にも似た笑みで返した。すると、今度は正面に腰掛けていた、下山が口を開いた。
「同い年って事は、この学校に通うの?」
「いや、由衣は元々いた学校に…。」
「えー!ここ来ないの!?つまんねー。」
大和の言葉が完全に終わる前に、藤田が口を挟む。そんな藤田に、大和は飽きれた視線を送る。
それに気付いた藤田は、開き直った様にふんぞり返った。
「はー、いいですよねー、大和くんは。あんな可愛い子と同じ屋根の下ですかー。なんのエロゲだっつーの。」
「しつこいな、お前は。つーか、エロゲじゃねぇ。」
「ま、藤田はうざいけど、確かに可愛かった。ぶっちゃけ、俺はドストライクだ。」
下山の発言に、藤田は同意する様に深く頷く。大和はそんな二人に大きく溜め息をついた。
太陽が赤く染まる頃、部活も終わり、大和はクタクタになって帰宅した。
がちゃりと玄関の扉を開けると、ちょうどそこにはリビングに入ろうとしていた由衣がいた。
「あ、お帰り、大和。」
「ただいまー…。」
由衣の言葉に、大和は力の抜けた言葉で返す。
そんな大和に由衣は思わず、クスクスと笑う。大和はそれに制止の言葉を向けたが、由衣は逃げる様にさっさとリビングへと入って行ってしまった。
玄関に一人残された大和は、ぽつりと一言、誰にも聞き取れない様な小さな声で呟く。
「確かに、可愛い…。」
「ご機嫌ね、由衣ちゃん。」
めぐみの言葉に、由衣は振り向いた。
「え、あ…。えっと、今日外出たくて仕方なかったんです。それに、大和の学校も見てみたいし。」
由衣は少し恥ずかしそうにそう答えると、また前を向いて歩き出した。
「あ、由衣ちゃん、ここよ。」
数分歩き続けていると、めぐみが校門を指差して、立ち止まった。由衣も立ち止まり、校門から見える校舎を眺める。
「えーと、校庭は向こうだったかしら…。」
校門の少し先にある段差の小さい階段を上りきり、めぐみは左手へと足を進めた。
少しすると、渡り廊下だろうか、頭上にのびる建造物が、この季節にしては珍しい暑い日差しを遮っていた。その下には、日陰でも分る程の日焼けをした少年たちが、楽しげに昼食を口に運んでいた。着ているユニフォームから見て、サッカー部だろうか。
「母さん!」
声がして、横にやっていた視線を反射的に前に向ける。すると、こちらに走りよってくる大和が見えた。
「サンキュー。土日って食堂開いてなくって、マジ焦ったわ。て、由衣も来たんだ。」
大和はめぐみから弁当を受け取りながら、由衣に視線を向ける。
「あ、大和、由衣ちゃん。私先生にご挨拶してくるわね。」
「ん。」
「はい。」
二人はそれぞれ返事をすると、めぐみの背中を見送った。
大和はめぐみから直ぐに視線を反らし、由衣に向き直った。
「ありがとな、わざわざ。」
「ううん、私は散歩したかっただけだから。」
「そっか。でも散歩がてらにしては、暑苦しいでしょ、ここ。ま、高校のサッカー部なんてこんなもんだけど。」
大和の言葉に、由衣は小さく声を上げて笑う。
するとその時、めぐみが話を終えたのか、戻って来た。それを合図に、大和と由衣は多少の別れの言葉を交わした。
「や~ま~と。」
由衣とめぐみの背中を見送り、友人たちがいる所へ大和は戻った。すると、先程まで弁当に夢中で食いついていた友人の一人である藤田が、大和の肩に腕をまわして来た。
「さっきの子だれよ?」
「え、あぁ、由衣?この間言ったじゃん?親が再婚したって。だから父親の連れ子。妹だよ、同い年だけど。」
「あれが、噂の妹ちゃんですかー。中々、可愛いじゃん。」
「やめろよなー。手出すなよ。」
藤田の軽口に、大和は苦笑にも似た笑みで返した。すると、今度は正面に腰掛けていた、下山が口を開いた。
「同い年って事は、この学校に通うの?」
「いや、由衣は元々いた学校に…。」
「えー!ここ来ないの!?つまんねー。」
大和の言葉が完全に終わる前に、藤田が口を挟む。そんな藤田に、大和は飽きれた視線を送る。
それに気付いた藤田は、開き直った様にふんぞり返った。
「はー、いいですよねー、大和くんは。あんな可愛い子と同じ屋根の下ですかー。なんのエロゲだっつーの。」
「しつこいな、お前は。つーか、エロゲじゃねぇ。」
「ま、藤田はうざいけど、確かに可愛かった。ぶっちゃけ、俺はドストライクだ。」
下山の発言に、藤田は同意する様に深く頷く。大和はそんな二人に大きく溜め息をついた。
太陽が赤く染まる頃、部活も終わり、大和はクタクタになって帰宅した。
がちゃりと玄関の扉を開けると、ちょうどそこにはリビングに入ろうとしていた由衣がいた。
「あ、お帰り、大和。」
「ただいまー…。」
由衣の言葉に、大和は力の抜けた言葉で返す。
そんな大和に由衣は思わず、クスクスと笑う。大和はそれに制止の言葉を向けたが、由衣は逃げる様にさっさとリビングへと入って行ってしまった。
玄関に一人残された大和は、ぽつりと一言、誰にも聞き取れない様な小さな声で呟く。
「確かに、可愛い…。」
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