第1回「血の祝祭日」

血の祝祭日(原題:BLOOD FEAST)
当サイトの創設号は、トータルで考えたら僕に一番恩恵を与えてくれている人であるのは確実、HGルイス(ハーシェルゴードンルイス)に決まり。理念に全くあてはまっていないように思われる映画だが・・・まあいいでしょ。好きなんだから(ルイスの映画群はある種の快楽をもたらしてくれるものであるのは確か)。これまで見た映画で最もエモ-ショナルなシーンを選べと言われたら、「2000人の狂人」のラストですよね。
という感じで(時代錯誤感は否めないが、好きだから)最初の特集(おそらくルイスの短編単体を取り上げてレビューすることはないと思う)は「HGルイス」でいきます。
【あらすじ】
エスニック食料品店のオーナーであり、「古代宗教儀式」の著者でもあるフアド・ラムセス(マットアーノルド)は、イシュタール神を現代に蘇らせようと目論んでいた。その儀式を行うのに必要となる生贄を集めるため、ラムセスは街の女達を次々と殺害していく。彼により、マイアミ中が恐怖のどん底にたたき落とされる・・・
【HGルイス作品の中毒性】
元祖ゴア映画職人、というよりかは残酷見世物ショーのマスターといった感じの方がしっくりくる(作品から受けるイメージ)。それも根っからのサービス精神故か、全く出し惜しみしないのが彼の持ち味。
本作でも開始1分でブロンド女がラムセスによって風呂場で包丁でもってBBQ刺しにされ、目玉をほじくり出される。殺される数秒前、彼女はラジオで「殺人鬼がうろついているので、外出は控えるように」との放送を聞いている。「まさかね私がね・・・だって家いるし・・・」とか考える暇もなくあっけなく死ぬ。出し惜しみしないことから生じるその「あっけなさ」。とは反対に、画面を覆い尽くすのは「思いも寄らない人間(肉袋)の中身」。この唯一無二のアンビバレントさに一種の中毒性がある。
「中身」は時代が進み、技術が進歩するにつれてより「現実的な感じ」になっていくが、その分「想像の範疇を超えない」描写も増える。「彼らは生きていた」(2019)を見たときにも感じたのだが、僕からしたら(99年生まれ)カラーよりも、白黒の方がよっぽど生々しく感じてしまうのと同じだ。
本作のゴア表現を見て「チープだ」との感想が目立つが、それでこそ、生きた人間の皮一枚捲るとあんなにもチープなのか!というショックがルイスの映画にはあるのだ(ガッツ石松が自分の脳みそを触ってむにむにした触感が気持ち悪くなりゲロ吐いちゃったみたいに。ゲロと言えば本作のプロデューサー デビッドFフリードマンは上映の際、ゲロ袋を観客に配ったそう)。
【ラムセスという男:コミュ障】
(※これはネタバレになってしまうのでまだご覧になってない方はご注意を)
・ラムセスが営むお店「FUAD RAMSES:EXOTIC CATERING」にとある奥様ドロシー・フレモントがやってくる。彼女はラムセスに今度開かれるパーティーのための料理の配膳を頼む。「最高のEgyptian Feastを用意しますよ・・・ああ・・5000年ぶりの宴だあ・・・」と1人恍惚とした表情を浮かべるラムセス。最終的にドロシーらは生贄にされそうになります。
・ラムセスが生贄の標的として狙うのは自信の著書「古代宗教儀式」を購入した女性(女性限定なのはおそらくイシュタール神が女性だからだろう)。
というこの2点からラムセスというキャラクターが掴めてくる。彼はどうしてただの顧客や自信の著書を購入してくれた女性達を殺害するのか。それはかみ砕いて言うなら「君が好きって言ったんじゃん!」ってことだと思う。ラムセスはあらゆることを自分に引きつけて考えてしまうため、相手の立場になって考えたり、ということはしない。コミュニケーションが一方的なのだ。昨今では(もう死語かな)コミュ障とレッテル貼りされ、蔑まれる対象であるが、ルイスはそんなラムセスを頭ごなしに否定して一面的に描いたりしない。「彼の中に眠る熱いパッション」と「イシュタール神への忠誠」をしっかりと描くことで、ラムセスには確固たる人間性があるのだ。あまりの情熱のあまり空回りする・・・何と愛おしいキャラクターであろうか。
【がんばれラムセス】
その後、ラムセスはイシュタールのため、美味しいEgyptian Feastを作ろうと孤軍奮闘!がんばれがんばれ
殺人→出汁取りを重ねる。個人的に3人目の殺害シーンが非常に好き。
男がコンバーチブルの車で女を家へ送り届け、別れ際にkiss。幸せそうな女。。。をずっと狙っていたラムセス。彼女の部屋に押し入り、ぐさぐさ。。。このシーンバックで流れている楽曲が美しくてとても良い。これルイス作曲の音楽なんだよね。毎回いいんだよなあ。(https://www.youtube.com/watch?v=Dk71_EvljaE の20:30あたり)
2人目の海辺のシーンで、若い女から切り取った肉をマイナップザック(布製)に入れて持ち帰ろうとするこの省エネっぷり!!(彼女を殺害された男の泣きっぷりもなかなかいい)
対して現代人側はといえば、上述のパーティーで。生贄にされそうになったのを間一髪免れたドロシーの娘、スゼット(コニーメイソン)が恐怖のあまり台所で号泣するのだが、助けに向かったドロシーは、「ハンバーガーでも買ってこようかしら・・・」とあろうことか娘ではなく宴会のことを心配がるこの体たらくぶり!!!人間性が腐りきっている!!!ゆるせん!!!
スゼットを殺し損ねたラムセスはついに警察に見つかってしまい、必死で逃げる(足悪いのに・・・このシーンのギアのかかり方すごい)。最終的にはゴミ処理場で回収車のテーブルゲートに乗り込んで逃げようとするも、プレス機に圧縮されてしまう。ミンチになった彼を見て警官が一言「この町のゴミは片付いた」と(うまい)。何と切ない幕引きであろうか。
終始残酷で、人があっけなく死んでいくが、どことなく切ない空気感がたまらないHGルイス「血の祝祭日」でした!!!
できることなら、ホラー映画史的文脈から彼を語ったりできればいいのだが、僕の知識の無さを露呈するばかりでなく他サイトからの引用で埋め尽くされる事態になることが予想されるので、現時点ではやめておきます。勉強を重ねつつ・・・ですね!
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