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春分の釣り

2021年3月18日 12時56分26秒 (Thu)

旬とはなんだろう?
 
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「春に3日の晴なし」周期的に春の陽気と雨風強まる日が繰り返すのがお彼岸の頃だ。気温は行ったり来たりだけど確実に季節は進んでいる。日ごとに夜明け時間は早まり、冬の頃ならば海の上で迎えていた日の出が、出船時間には完全に日が昇りきっている。葉を落としていた街路樹も芽吹き、花をつけはじめた。街にも、何かが動き出し始まろうとする気配が漂っている。冬枯れの野原にもまた、一雨ごとに芽吹く草花も見えだしてきた。若干困るのが、陽気に誘われて屋外に無防備で出かけてしまうと、涙鼻水ノンストップ状態の花粉症にみまわれちまうこと。しかし、海の上ならば、そうはならない。花粉が海に落ちて舞い上がらない効果か、不思議と花粉症は発症しない。もっとも、釣りをしているさなか、「全集中」無我夢中、チマナコになっているのだから、単に気付く余裕もないのかも知らん。

年から年中、イカを相手に釣りに出かけるイカおやじが、去年、お彼岸に釣ったヤリイカが実に旨いと思った。烏賊の姿、体格は、真冬突入の師走から正月過ぎぐらいまでの時期が圧倒的にいい。ずっしり重く肉厚に育った立派さは見事で、見栄えは真冬が最高なのだ。だけど厳冬期の2月を経て3月になると、体長こそ伸びはすれど、身の厚さの半分ほどまで痩せしてしまう。パラソルサイズのオスのヤリイカは、だから、船で生きたままを保つために海水を循環させた樽の中で容易に折れ曲がっちまう。ちょっと「盛りを過ぎた」感が強まってくるのだ。だけどそれを、食したら・・・余計な若さをそぎ落として旨みが濃縮されているように感じてしまったのだ、身のしっかりしたプリプリ感と引き換えに。

この時期、メス烏賊はほぼ100%抱卵している。イカの卵も外れなく同時に味わえる。このことも春分ヤリイカの良さを引き立てていたのかもしれない。味というのは各人の好みもあろうから、この感想は自分だけなのかもしれない。けれど、昨年感じたところが本当なのか、毎年そうなのか。そうして今年の春分の日もまた、「ヤリイカ乗合」の予約をして検証しようとしている男である。
 
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そんな春分の日ヤリイカ釣行は3月に入ってすぐに計画、2月の終わりごろに乗船予約をしていた。ところで3月、突如、相模湾内に「スルメイカ爆乗り情報」が出た2021年。まだコロナの緊急事態宣言解除前だったけれど、イカおやじたちは、
「湾沖、湾内ビール瓶スルメ群来襲、緊急出動要請、なのだな!」
と、身勝手に受け止めた。船宿も真夏の最盛期同様、直結仕掛けで、棚に仕掛けが入っていれば勝手にスルメがとびかかってきます、とか、相模湾全域でスルメの群れ確認、とか、釣果情報やHPを通じて数日間続けざまに発信し煽ってくれた。その爆乗り模様の中心は洲ノ崎から城ヶ島沖、沖の瀬といった、どちらかというと相模湾東部海域。実際、連日トップ100杯越え、あるいはそれに迫る好釣果が発信された。

城ヶ島や洲ノ崎、沖の瀬海域は平塚よりも東側、茅ケ崎・葉山・長井・三崎などの港の船の操業範囲で、小田原や真鶴方面からはやや遠い。夏、マグロ・カツオの群れ来襲ともなると相模湾内全部の船が出撃、西の港の船も遠征するけど、イカではおそらく出陣しない海域なのだ。だから、西の船宿にはその恩恵がないのかなと思った。しかし、どうやらスルメの群れは江の島沖や二ノ宮沖の瀬ノ海周りの湾奥にもいくつかの分隊が回遊し、派手さこそなかったけれど、悪くない模様でヤリイカとともに釣果を飾った3月初旬となっていたのだ。

春先、ヤリイカ同様、スルメもまた抱卵する。春先にスルメの群れの湾内回遊があると、巨大な体で強烈な引きのビール瓶スルメがヤリイカ船で釣れることがあるものだ。この時期に大型スルメが釣れる事自体は、だから、毎年、時々あったし、経験もある。だけど、ここ数年、ベストシーズンの夏でさえ、スルメ不漁続きだったから、今年3月の相模湾内スルメ爆釣劇は、この先の湾内でムギイカ・ニセイカの大量発生につながるいい前兆かも、と、勝手に想像するワタシ。
 
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春のスルメ回遊群を捉えた釣り人は雌の抱卵に気付くはずだ。スルメは沖干し。それがイカおやじ定番の船上の常識で釣ってはさばいて開いて干してを繰り返すことが必須のスキルでもある。さばき開いた体内に卵の塊を見つけることがこの時期ならよくある。それはヤリイカの透明感のある淡い黄の卵よりは少しばかりくすんだ黄色で、粒粒がはっきりとしたしっかりした卵塊だ。しかし、大概の釣り人は他の内臓とともにこれは見て見ぬふり、排除し、干すことに専念する。だけど根っからのイヤシンボウの私、昨年の春分の頃、この卵にアニサキスなど寄生虫が取りついてないのを確認しながらおそるおそる口へほおり込んでみた。

ねっとり感とともに魚卵・ヤリイカ卵と同じような旨みが口内に広がった。悪くない。これを食さない手はないだろう、そう思って今後のイカ釣り調達食材リストとして記憶したのであった。そして、今年。春のビール瓶スルメ大回遊中。となれば、釣らないわけにはいかんだろう!すぐさま迫る休日にイカ釣りの小田原の定宿へ予約したのである。だが、すでに瀬の海界隈では下火になっており、かろうじて残存していたやつらが、なんとか、という、ありがちな物語展開だった。
 
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スルメ5杯にヤリイカ雌5杯というのが、その時の我が釣果。それでも何杯かのスルメは雌で、しっかり抱卵しており、タマゴの存在とその味の検証は出来たのである。ヤリイカ卵との味くらべも。スルメの卵は、今回、さっと湯がいて適当に切りつけ、やっぱり湯がいた肝とともにお造りと一緒に食してみた。比較にヤリイカの卵。こちらは火を通さずそのまんま。火を通したのはスルメの場合、万が一のアニサキス混入の可能性を排したためなのだけど、この手間をかけても食してみる価値、アリである。たぶん、煮付けても悪くない。だけど、そうなると煮汁が勝り、味の本質がわからんかも。ゴボウなどとともに煮付ければ、多分、タイやイサキの魚卵と肩を並べるものとなるだろうなあ、とは思ったけれど。
 
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スルメの卵は悪くない。もちろん、スルメならではの肝もまた、悪かろうはずがない。しからば果たして、この時期の身は?となると、これも個人的な見解だけど、巨大サイズで食い応えあり過ぎなのだ。最近加齢とともに衰えている歯の問題もあるが、夏の育ち始めの身の柔らかなスルメの方が、味・旨味が強い気がした私。これは春分の頃、ヤリイカの身が痩せても味わい深まるのとは相反することのように思っている。スルメなら、5月~7月のムギイカ・ニセイカが最高に旨い。開いたとしても身に皮つきで食すのが、いい。マジックペンサイズのムギイカなら、寄生虫と遭遇したことはまだ一度もない。安心して生食してきた。少し大きくなったニセイカなら、初夏の日差しから梅雨時の晴れ間に仕上げた沖干しが絶品で、適度な柔らかさと濃縮された旨味を、さっと炙って味わえる。雨で干せなかった場合、胴にもち米を詰めてイカ飯づくりも、いい。育ち大きくなりすぎた?春先の抱卵ビール瓶スルメは、立派な体格ゆえ、身が厚く硬くなりすぎちまってる気がするのだ。

かなり前振りが長くなった。さあて、今年の春分。ヤリイカ極旨産卵群は私の相手をしてくれるのだろうか?その模様は、釣行後に記述予定なのだ。

(釣行後の記述)

2021年3月20日。今年は土曜日が春分の祝日と重なってしまった。週休2日スケジュールの勤め人にとっては少しばかり大ぴらに休める日が損しちゃった感も正直ある。

週初めの天気週間予報では土日は雨模様で風雨も強まるとのことだったが、週が進むにつれ、天気は上方修正され、土曜日には雨風なく日差しもありそうな予報となってくれた。翌、日曜日はその分?悪天候で南の強風予報だ。もしかすると土曜日の穏やかな曇り空のもと、産卵群が大挙して釣り場にノッコんでくる、かも?
 
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先週の休日には瀬の海(二の宮沖)で、スルメまじりのヤリイカを釣らせていた小田原の船宿。休日明けとともに真鶴半島の先端の浅場、60-80mぐらいのところにヤリイカの模様を見出し、その後数日、派手さはないけどそこそこの模様で経過していたのだ。いつもの人気船宿には満員御礼覚悟で、春分の日釣行は10日ほど前に予約して臨んでいたのだが、今度の土曜日祝日は2艘出しします、と連絡があったから、比較的ゆったりで出船できるようだ。あとは早めの到着を心掛け、やりやすい場所を確保できるか、というところ。だが、ここに問題発生。この週に入って、我が持病、痛風発作が右足先端に発生、それが足指から足の甲、アキレス腱とまんべんなく場所を変えて発症し、なかなか終息してくれないままだったのだ。不摂生・無養生のなせる業とはいえ、眠りを阻害もするし、思うように動き回れないから、困ったもんだ。

港に4時過ぎ到着。既に船長が2番目の船の案内最中だった。その中に昨年末に中深場釣りでご一緒した常連女性釣り師、Mさん改めSさんの姿があった。このたびは並びで場所を取らず、
「あえて船の前と後ろのはじっこに陣取って勝負よ!」
と言うから、
「こちとら足をひきずりながらですから手加減ご容赦をくださいな」
と言っても、中乗りさんのFさんを交え、
「そんな状態でも釣りにくるんだから、バカだねー」
と笑われてしまうのだった。荷物の積み込みを手伝ってもらって、ともあれ、春分の日戦線、なんとかはじまりなのである。
 
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今回のイカは親方の操船。船は一路、真鶴半島の先端、「三ツ石」の沖を目指した。僚船は息子の船を含め、5,6艘。小田原と真鶴周りのイカ釣りを得意とする船が集まっている中での開始。現場到着後まもなく、
「なんか気配あるけど、まず潮流れ見てみっから、錘もってー、合図で投入してねー。はい、やってー!」
マイクでの案内。錘に引かれ、道糸が60mほどでたところで着底。着乗りは、ない。底を切って、アタリを見ると、何か触った気配。だけど合わせても乗らない。魚か?すぐさま回収となって、潮回りしての二回目。

「グオン」

そんな竿先が30㎝ほど引き込まれるようなアタリ!このストロークの長さは雄のヤリイカが角を抱きに来た感触に間違いない!同様に船の何名かにもあたりがあったようだ。比較的浅いから、巻き上げにはそんなに時間はかからない。海も、まあ、穏やかな方である。やがて引き上げられた仕掛けの先に飴色のパラソルが見え、海面から引き上げられると同時に潮を吹き、そして取り込まれた。樽に泳がせるも、樽から体がはみ出してしまうサイズだ。
「まだ気配あるよー!やってみてー」
再投入。しばらく誘っていると、グーンと重い乗りがあって、これも同サイズの雄と確信。1杯ずつ、3回連続の確保スタートだった。もしや、朝のこの感じなら、今日は大変な大漁になってしまうんじゃ?そんなことまで頭をよぎってくる。

この朝の好模様で船中、乗船していたみなさんそれぞれイカを確保、全員ボウズ脱出、親方も、
「これで、前回、時化の瀬の海でボウズ食らわしてしまったお客さんにも取らしたから、義務、果たした」
と安堵の声を発するほど、いい開始となった。中には一度に5杯がけとうという人もあったらしいが、当方には1杯ずつだった。樽からはみ出す3杯をにんまりしながらクーラーに収めて潮回り。

その後、ポツポツと釣果を伸ばすも、次第に群れを探す時間が長くなり、また、イカが乗ってくる間隔も長ーくなってしまったありがちの展開。
「気配はでてんだけど、のんねーなー!活性なくなっちゃたかなー?潮、止まっちゃったなー」
そんな親方の解説。なんとかツ抜けに届こうか、というところで失速なのだった。5杯目までは雄のデカヤリばかり、その後、小降りの雌ヤリとなぜかスルメの新子、マックペンの軸サイズのムギイカを捕獲。ずいぶんと早々、産卵して生まれたスルメ若者が現れたものだと、びっくりもしていたのだけど。

三ツ石から岩までの間を探索するも、なかなか状態は好転してくれなかった。そんな中でミヨシに陣取ったSさんは、デカいマルイカをかけていたようだが、マルイカは当方、アタリあっても掛け損じゲソだけ。一旦掛け損じすると、なぜか連続してしまう。5回ほど、巻き上げ途中で、プツッ、という感覚を残して重さが消えることを繰り替えしてしまった。明らかに雄ヤリのストロークの大きなあたりに合わせても途中で、プツッ。イカの活性が低く、いわゆる「乗りが浅い」状態だったんだろうけど、この辺、なんとかならなものか。自分の仕掛けの角が曲がり、かかっても外れちゃってるんじゃないか、そんな疑念で、仕掛けを点検するも、さほど角のダメージはない。

ばれるイカはどうやってもバレる、と潔く割りきって次を掛けに行けばいいのも正解だろうし、そんな乗りが浅い状態でもしっかり抱かせて乗せるやり方がないのだろうか?と試行を繰り返し見出すのも正解やもしらん。でも、また、海の状況もまた時々刻々変わるから、一つの思い込みにとらわれてばかりだと、やっぱりうまくかないものだ。お昼のおにぎりを食べて気分と機運の転換を図るのでいいのかもしれない。

お昼を回って潮も動き出したのか、ポツポツながら船に取り込まれるイカの姿が見えだした。連続バラし地獄からようやく立ち直れたのか、ようやく当方にもメス中心に上がりだして終了。最終結果、雄ヤリ10杯、雌ヤリ7杯に、ムギイカ1杯。マルイカがほしかったところもあるけど、春分の味を確かめるには十分すぎる釣果は、合格としても怒られはしないだろう。
 
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我が家だけ消費に余った分は実家へ送り届け、雄雌3杯ずつとムギイカをさばいて、夕食準備にかかった。今晩はシンプルにお造りで検証。雄雌1杯とムギイカを開いた。
 
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雄イカの体の中はほぼ空っぽ状態、雌イカはタマゴを抱えている状態である。オスもメスも冬よりも身は半分ほどの厚さに痩せている。雄は先端部は身よりもエンペラの方が分厚いぐらいだ。見た目、冬の筋肉隆々からは落剝感があって、旨さが増しているようなところは外見上わからないし思えない。それでも去年の自分が感じたように旨味は増していると今年の自分もまた、そう思うのだろうか。雄も雌も、縦にも横にも切り分けて、それぞれ味わってみた。アクセントに、今回、ムギイカの皮造り。
 
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歯触り、硬すぎない。程よいかみごたえ。ヤリイカらしい甘味と上品な旨味が噛むほどに滲み出る。ゲソも、そぎ切ったエンペラも、適度な歯切れ良さなのだ。やっぱり、旨さ向上じゃないか。アクセントのムギイカはスルメらしい少し粘りのある歯ごたえと旨味、若々しい柔らかさだった。まだ時期的に早いせいもあってか、最盛期の5月の頃りもやや旨味の薄さがあるかもと思ったけど、それでも十分にムギイカらしさが出ていた。いずれも釣った日の夜の感想ですけど、ね。寝かせて熟成したり、冷凍したりすると、また別の評価となりえるでしょうけれど。

食いしん坊釣り人にとって、釣れる魚の美味しさが一番になる時期、それが旬です。
 

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極地で水の中とその周辺で生きている生き物を対象とした生態学を探究中。

北極や海が冬に凍るオホーツク、はたまた夏の南氷洋で氷とともに生きるアイスアルジー(海氷藻類)の研究に携わった後、これまでに日本南極地域観測・越冬隊に3回、夏隊に5回参加しながら南極の湖の野外調査研究を続けている。
性別
男
血液型
O型
自己紹介
極地研究所に職を得て以来、地球の北や南の極地でなぜか騒々しくドタバタ・ジタバタしながら動き回る生活を四半世紀以上続けてきたことに気づいてしまった。現在は、南極でひそやかに輝く湖たちと付き合ってきたせいか、年齢相応の落ち着いたオトナになっているような気がする。
趣味
釣りと料理、最近、家事一般雑事など、多趣味になりつつあるのが困ったところ
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自転車操業、せっかちで多動症のようなところで人生をやり過ごしているような技
職業
国立極地研究所 生物圏研究グループ・総合研究大学院大学 極域科学専攻 教授

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