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バリ島の伝説と神話

 バリ島には様々な伝説や神話がありますが、このサイトで紹介している見学地や資料に関係する伝説や神話をご紹介します。行った後でも行く前でも、知っていると旅が楽しめますよ。

contents
《伝説》
伝説1 ティルタ・ウンプル寺院の聖水
伝説2 グヌン・カウィを作ったといわれるクボ・イオ
伝説3 プラタナン・サシ寺院 ペジェンの月
伝説4 ゴア・ラワ寺院 コウモリ洞窟
伝説5 バスキ神と司祭とその息子~マニック・アンクランの物語
伝説6 レゴン伝説 レゴンの踊りが出来たいきさつ
伝説7 ランダ物語 チャロン・アラン
伝説8 ジャヤプラナ物語
伝説9 インタイとサンピック
伝説10 木の彫像と愛を交わした娘 クランの祖先
伝説11 ジャヤ・パングスとカン・チン・ウィーの物語
伝説12 マヤ・ダナワとダルム・ブダウル
伝説13 シンガサリ王国と魔法のクリス
《神話》
伝説14 バリ人の世界観
伝説15 大地の始まり~四方向神のゆわれ(プルワカ・ブミ)
伝説16 乳海の撹拌
伝説17 カラ・カウと聖水 日食や月食の由来
伝説18 バタラ・カラの誕生 破壊者シワ神と維持者ウィシュヌ神
伝説19 カンダ・ウンパッド(四兄弟)のいわれ
伝説20 アハーリヤーとインドラ神
伝説21 シヴァ神の4面の顔、インドラ神の千の目
伝説22 ガネーシャの象の頭と一本牙
ラーマーヤナ物語マハーバーラタ物語はこちら
 バリ島の神々は別なページで紹介しています。
 
※王国、神、寺院の情報は別なページにリンクして説明します。

ティルタ・ウンプル寺院の伝説

ティルタ・ウンプル寺院の聖水の泉

 むかし、マヤ・ダナワという悪い王様がいました。王様は強い魔力を持ち横暴の限りを尽くしました。ついに自分が神だと言いだし、民衆に信仰を禁じてしまいました。
 このことがシワ神の耳に入り、怒った神様は、マヤ・ダワナを討てと雨の神インドラ神を遣わしました。民衆を救うために現れた、インドラ神と悪い王との間で戦いとなり、悪い王様は一旦は敗退しますが、復讐に燃えた王様はこの地域の全ての水に呪いをかけて毒に変えてしまいます。
 知らずにその水を飲んだ、この地域の全ての民が死に絶えてしまいました。

 これに怒ったインドラ神は、自らの杖を、大地に突き刺すと、そこから大量の霊薬の水が湧き出ました。マヤ・ダナワ王が川に流した毒により死んだ者の口に、その水を注ぐと人々はたちまち生き返えりました。
 そして、マヤ・ダナワ王はインドラ神により命を奪われ、その時、マヤ・ダナワ王の血が川に流れ、その川を赤く染めました。人々はその川の水を悪の川とみなし、使用してはならない川としたそうです。

 神が作り出した湧き水が、ティルタ・ウンプル寺院の聖なる泉だと伝えられています。

 ※杖を大地に差し水を湧き出させたのが、インドラ神ではなく「高僧」だという話しもあります。
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グヌン・カウィの伝説

グヌン・カウィのストゥーパを作ったと言われるクボ・イオ(Kebo Iwa)

  クボ・イオは、ワルマデワ王国最後の王ブダウルの家臣で、雲をつく大男で怪力の持ち主だったと伝えられています。(ワルマデワ王国は13世紀にジャワのマジャパイト王国に滅ぼされます。)

 ジャワのマジャパイト王朝は、バリを支配下に置くためガジャ・マダ将軍とその部隊を派遣しました。将軍はブドゥルに王宮を構えていたブダウル王を殺し、あっという間にバリを手中に収めました。
 しかし、バリには巨人クボ・イオがいたのです。
 クボ・イオがいる限り、ワルマデワ王国を完全には制服できないと判断した将軍は、クボ・イオの暗殺を企てます。連行し、ジャワ島に引き上げる船の上からクボ・イオを落として溺れさせる計画を立てましたが、クボ・イオの足が海の底についてしまい、計画は失敗に終わりました。
 ジャワの都に戻ると、将軍は王妃をクボ・イオにめとらせるという約束をします。そして、王妃のために沐浴場を造るように命じました。クボ・イオは命じられるままに沐浴場用の深い穴を掘り始めました。
 将軍は穴の中にいるクボ・イオを生き埋めにしようと石を投げ入れましたが、クボ・イオは石を放り出して這い上がって来て、またしても、暗殺計画は失敗に終わりました。
 クボ・イオは「私を殺すなら石灰の中に投じるがいい」と、ガジャ・マダ将軍に教えたのです。将軍は言われるままにクボ・イオを石灰窯に投げ入れ、こうして、ガジャ・マダ将軍はクボ・イオの暗殺に成功したのです。

 グヌン・カウィの崖にあるストゥーパは、イボ・クオが一晩で指の爪で刻んで作り上げたのだという言い伝えが残っているそうです。
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 昔、子どものできない金持ちの夫婦がいました。
 二人はいろんな寺院を回って「どうか、子どもを授けてください」と祈り、ついに男の子を授かりました。男の子には名前をクボ・イオと付けました。
 彼は驚くほどごはんを食べ、またたく間に成長して巨人になりました。夫婦だけではとてもまかないきれず、村人たちも炊き出しをして彼の食事を作らなければならなかった程です。
 困り果てた父親はクボ・イオを殺そうと思いました。
 ある日、クボ・イオを連れて森に行き、大きなバンニャンの木を彼の上に切り倒したのです。父親は村に帰って、息子が木の下敷きになって死んだと村人に告げました。そこに「お父さん、この木をどうしましょう?」とクボ・イオがバンニャンの木をかかえて帰ってきました。
 自分の手には負えないと悟った父親はジャワ人に助けを頼みました。
 ジャワ人はクボ・イオのところに行き、「ジャワで井戸を掘ってくれる人を探している。」と話しました。心優しいクボ・イオは海を歩いて渡って、ジャワに井戸掘りに出かけました。
 道具は何もいらず、爪があれば十分でした。彼は爪でひたすら、井戸を掘り続けました。
 そして、水が出るところまで掘り進み「おーい、水が出たぞう」と叫んだその時、大勢の人々が、砂やジャリの詰まった袋を井戸の中に放り込んだのです。
 こうしてもクボ・イオはジャワの井戸の中で死んでしまいました。
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プナタラン・サシ寺院の伝説

ペジェンの月伝説

 大昔、バリ島の夜空には13個の月が輝いていました。ある時、その内の一つが地上に落ちて来て、ペジェンの地の大木の天辺に引っかかってしまいました。 この月が昼夜を問わず輝き続けるため、盗み仕事が出来なくなった泥棒たちは困ってしまいました。 そこで、盗賊の一人が月の引っかかった大木によじ登り、月の光を消すために小便をかけたところ、 月は大爆発を起こして泥棒を吹き飛ばし、地面に落下しました。輝きを失い地上に転がる月は姿を変え、青銅で出きた巨大な鼓になっていたのです。その証拠に今でもペジェンの月の大銅鼓は底の部分が一部壊れているのです。
 以来、ペジェンの村人たちは、この鼓を神からの授かり物としてお寺(プラタナン・サシ寺院)に祀り大切に保存しています。
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ゴア・ラワ寺院の伝説

コウモリの棲む洞窟はブサキ寺院までつながっている

 その昔、メングウィ王国の王子が家来と共に、数万のコウモリが棲み付く洞窟の探検に出かけました。王様は王子が自分の後継ぎにふさわしいのか決心がつかず彼の度胸を試したのです。王子は家来を入り口に待たせて一人洞窟内に入ったのですが、家臣たちを残したまま何時まで経っても戻って来ませんでした。
 心配した父王が全家臣に王子を探す様に命じ全島に使いを走らせますが、その結果、王子は、この地から20kmほど離れたブサキ寺院で発見されたのです。
 以来、バリ島の人々はこの洞窟が奥でブサキ寺院にまで繋がっていると信じる様になり、洞窟の入り口に寺を設け、熱心に参拝する様になりました。
 今でも、この寺に湧き出る水はブサキ寺院から流れて来ていると信じて、沢山の参拝者がこの水を儀式用の聖水として用いるために汲んで行きます。
 また、ここのコウモリたちは、洞窟の奥深くに棲む龍、ナガ・バスキ神の餌になっているともいわれています。
(ゴア・ラワ寺院で飼われていた闘鶏用の鶏が洞窟に逃げ込み、ブサキ寺院で発見されたなどのいろいろな話があるとのことです。)
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バスキ神と司祭とその息子~マニック・アンクランの物語

なぜ、バリ海峡が存在するのか

 ジャワのダハ国にシディ・マントラというブラーフマナ(司祭)が住んでいた。すべての宗教的学問を習得した非才なる人物として広く国中に知れ渡っていた。最高神サンヒャン・ウィデイ・ワサにとっても、お気に入りの人物だった。神からのご加護がありながら、シディには子どもがいなかった。何年もの間シディは瞑想修行をしたり、神に祈りや供物を捧げた内に、ようやく子宝にめぐまれ、その子をマニック・アンクランと名付けた。
 
 マニックは成長するととても賭けごとが好きに成年になっていた。彼の賭金はきまって高額な上、いつも負けてばかりいて、その内家族の財産すべてを使ってしまった。父シディは改心させようと最善を尽くしたが、なすすべはなかった。とうとうマニックは、絶望して自分の借金がなんとかならないかと父に懇願した。
 
 ある日のこと、シディは瞑想中に天の声を聞いた。「シディ・マントラよ。東の方にアグン山という山がある。そのクレーターの奥深くに財宝が隠されていて、その財宝はナガ・バスキ神という巨大な龍の神様が守っている。そこに行ってバスキ神に財宝を分けてくれるようにお願いすれば手にすることができよう。」
 
 シディは瞑想から覚めると、アグン山に向けて旅だった。多くの困難を乗り越え、ついにシディはアグン山の頂上に立った。霊鈴を鳴らし、瞑想をして呪文を唱え、バスキ神を待った。すると間もなくバスキ神が現れた。シディは自分がここに来た目的と天からの声をバスキ神に話した。バスキ神は、シディが神の好みの人物だということを察知し、彼の願いを聞き入れた。
  バスキ神が身体を振ると、うろこから数々の宝石が転げ落ちた。そして、もてるだけの宝石を持って行ってよいと告げたのであった。シディはバスキ神に丁重なお礼を告げて、家に戻り、その宝で息子の借金を全額返済した。これで、息子マニックも悔い改めるに違いないと信じたが、息子の博打は一層ひどくなる一方であった。シディは、またアグン山に行き、バスキ神に願いをこうことになる。
 
 マニックは、父がどのように金を工面するのかをいかぶっていたが、そのうち、父の宝物がアグン山からもたらせられることを知った。マニックはアグン山のような聖地を訪れるためには、特殊な呪文が必要なことはわかっていた。しかし、父からの呪文の教えを学ぶことをしてこなかったのだ。彼は父の「霊鈴」さえあれば、自分でもなんとかなると考えた。
 
 アグン山に登ったマニックは、霊鈴を振り、バスキ神が現れるのを待った。やがて、山が揺れ巨大なバスキ神が姿を表して、マニックにたずねた。「おまえは誰だ。いったい、何をしにここに来たのだ。」マニックは怖かったが、正直に来た理由を話した。 
 「マニック・アンクランよ。ほしいだけの財宝はやろう。ただし、一つだけ注文がある。おまえが博打をやめることだ。おまえの行いで、おまえを愛している人々がどんなにか苦しんでいることだろう。この世で正しいことをしていれば、来世には至福がやってくる。よくないことをすれば悲惨なことがやってくる。わかったなマニック。今の生き方を変えることを約束せよ。」マニックはためらわずに「はい」と答えた。
 
 バスキ神が宝石を運んでくるために、クレーターの中に戻り始めた。マニックはその光景に魅了されていたが、まばゆいばかりの宝石がバスキ神の尻尾の方に輝いているのが目に入った。彼の脳裏に邪悪な心がかすめた。マニックは、手元のクスリを抜いて、尻尾の宝石にめがけて振り下ろしたのだ。切りつけられたバスキ神は、マニックに向かってきた。マニックはできる限りの力で逃げたが、その瞬間、バスキ神の炎に包まれて、灰になってしまった。
 
 マニックの家では、息子の帰りを待っていた。父のシディは人々に聞いてみたが、誰一人として知る者がいない。しかし、シデイは霊鈴が見つからないので、マニックはアグン山に行ったことを確信し、息子を捜しに出かけた。アグン山に到着すると、シディは呪文を唱え、バスキ神の出現を待った。やがて、バスキ神が現れ、「シディよ。息子は灰になってしまった。」と告げた。シディは信じられなかった。そして、息子の犯した罪の重さにため息がで、そして、それ以上に息子を亡くしたことで打ちひしがれた。
 「バスキ神様。私がどんな気持ちでいるかおわかりでしょう。あなたは息子を殺してしまいましたが、甦えさせることもできるはずです。」「それでは私の尻尾はどうなるんだ。それを取り戻してくれるとでもいうのか。」
シディは、バスキ神の尻尾を取りもどすための呪文を唱えた。そして、ついに成功した。かわって、バスキ神は霊力でマニックを生き返らせた。シディはバスキ神に丁寧にお礼を告げた。そして、今度はまっとうに生きることを息子に約束させた。
 
 シディが家に息子を連れ帰り、「息子よ。これから新しい人生を送るのだ。」と告げた瞬間、シデイは突然消えてしまった。そして、シディが立っていた場所とマニックが立っていた場所との間の地面が割れ、みるみるうちに水があふれてきた。それは大きくなって海になった。
 これが現在バリ海峡と呼ばれているものだ。ジャワ島とバリ島を隔てている海はこうしてできあがったということだ。
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レゴン伝説 レゴンの踊りが出来たいきさつ

天女の面とレゴン

 十七世紀の半ばのこと、スカワティ王朝の初代の王の長男デワ・アグン・カルナは瞑想が好きでした。この人がスカワティのクテウェル村で長く瞑想にを続けるうちにある日、神の国に迷い込み、そこで天女の舞を見るのです。
 彼は瞑想から覚めてもその美しさが忘れられません。なんとかしてあの舞を再現しようと、村の娘たちを集めて踊らせてみましたが、いくら探してもある天女の美しさにかなう娘はみつかりませんでした。
そこで、彼は天女の面をつくって、それをつけて踊らせます。これがレゴンと呼ばれるものの最初だと言われています。

 クテウェル村には、このときのものと伝えられる面が今も残っていて、この上なく神聖なものとされています。大事な儀式のときに、少女たちがされをつけて踊るのですが、それは見事なものです。クテウェルのこの踊りは、サンヒャン・レゴン(サンヒャンは神さまの意味)と呼ばれてきました。これは現在観光客が見るレゴンとはまったく違うものです。
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ランダ物語 チャロン・アラン

ランダ、チャロン・アランと聖者、ムプ・バラダの戦い

 老魔女ランダであるチャロン・アランは、幸福と繁栄を誇るエルランガの王国ダハを滅ぼそうと心に誓った。というのは、娘である美しいラトナ・ムンガリが侮辱されたと考えたからであった。ダバの貴族たちが母親の悪い評判を恐れて、娘との結婚を断ったのである。チャロン・アランは弟子たちとともに墓地に行き、黒魔術の神であるベガワティを崇めてダハを滅ぼすために手を貸してくれるよう祈り、踊った。この女神が姿を現して一緒におどり、許可を与えたが、王国の中心には手をつけるなと魔女に警告した。妖術師たちは四辻で踊ったが、それからまもなく人が大勢病に倒れた。

 疫病の原因がわかると、エルランガは兵士たちに魔女を退治に行けと命じた。兵士たちは魔女の家にもぐりこみ、眠っている間に彼女の心臓を刺したが、チャロン・アランは傷も負わずに目を覚まし、勇敢な兵士たちを自分自身の炎で焼き尽くしてしまった。魔女はもう一度墓地に行って、弟子たちと踊り、死体を掘り出して刻み、肉を食べ血を飲み、腸を首飾りのように首にかけた。ベガワティが再び現れ、血祭りに加わったが、チャロン・アランに気をつけるように警告した。
妖術師たちがまた四辻で踊ると、恐ろしい疫病が国を荒廃させた。エルランガの家来は死体を墓地に運ぶのがやっとで、埋めることさえできずに死んでいった。

 思いあまった王はルマー・トゥリスの聖者でムプ・バラダという、この世の人間で魔女を負かすことができる、ただ一人の人を呼びにやった。ムプ・バラダは慎重に作戦を練った。そして若い助手のバフラを送って魔女の娘に求婚させた。母親は有頂天になって承諾した。幸せで情熱的なハネムーンの後、バフラは妻から、チャロン・アランの力の秘密は妖術の小さな本を持っていることだと聞き出し、それを盗むと師匠に引き渡した。聖者は本を写すと、なくなったことに気づかれないうちに返した。この本は正義の手引書で、後から逆に読まなければならないものだった。こうして、聖者は犠牲者のうちで遺体が朽ち果てていないものを生き返らせることができた。
 新たな知識で武装した彼は魔女の罪を告発したが、彼女は聖者に挑戦し、怒りにみちたまなざしだけで巨大なバンヤンの木を燃え上がらせた。バラダは木を完全な元の姿に戻し、怒れる魔女の鼻をあかしたが、彼女は今度は火を聖者に向けた。
聖者は身じろぎもせず、魔女自身のマントゥラ呪句のひとつを用いて魔女を死なせた。彼女は怪物のようなランダの姿で死んだが、バラダは彼女を罪から解放し償いをさせるため、生き返らせて人間の姿にし、それからもう一度彼女を殺した。
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ジャヤプラナ物語 

ラヨン・サリ(香る死体)

 シンガラジャ近郊のカリアンガット村に力のある領主の王がいた。彼は人々の評判が必ずしもよい訳ではなかった。一方で、彼の親しい友人のジャヤプラナは若くて聡明で美男子だった。ジャヤプラナには美しい嫁がいた。
 王はジャヤプラナの幸せなうわさを聞くと妬ましかった。ある時、王はジャヤプラナにバリの西のある所に密書を持っていってくれるように頼んだ。ジャヤプラナの嫁は夢の中で不吉なことを察知したので、ジャヤプラナに他の人に行ってもらうように願った。しかし、そうもいかないので彼女は誰か心強い護衛を必ずつけるようにジャヤプラナに頼み込んだ。

 王から託された密書の内容は、それを持ってきたジャヤプラナをすぐに殺してしまえ、ということだった。さて、夫の暗殺を聞きつけたジャヤプラナの嫁は非常に嘆き悲しんだ。王はそれを知っていたが、そ知らぬふりで驚いた様子をみせた。そして、ジャヤプラナの嫁に「ジャヤプラナは生前に、私がもし亡くなったら王の私と嫁が結婚するように望んでいた」とウソの話しをもちかけた。だが、彼女は王と再婚する位なら死を望んでいた。

 とうとう、彼女は自殺してしまった。彼女が死んだ後、その遺体からは香が発していた。だから、彼女はラヨン・サリ(香る死体)として知られるようになった。
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インタイとサンペック アルジョ劇の話

墓から現れた二匹の蝶

 インタイという名前の女とサンピックという名前の男がいました。二人とも同じ学校に通っていました。インタイは男の格好をして男になりすましていたので、人々はインタイが女だとは知りませんでした。インタイもサンピックもよく勉強ができた子でした。ある日服を脱いで水浴をしているインタイを、サンピックが見てしまいました。サンピックは気がおかしくなるくらいに驚きました。「なんて美しい女性だろう」と。二人のあいだに恋がめばえたのです。

 サンピックはインタイに結婚を申し込み、それでインタイはサンピックにこう約束しました。「私はあなたと結婚しましょう。しかし、私の家はとても遠いので・・・・・4+6=10、8+2=10、7+3=10」と言ったのです。それでサンピックは考えたあげく、一ヶ月待てということだと思ってしまいました。本当はインタイは10日間待てと、言いたかったのです。しかし、サンピックは「30日」と思ってしまいました。

 30日後に、サンピックはたくさんの贈り物をもって、何人もの従者を従えて、インタイのもとを訪れました。インタイはサンピックを機嫌よく出迎えて、ごちそうやら飲み物やら出してもてなしてくれました。
「ところでサンピック、どうして今ごろ来たのですか?」
「なんでそんなことを言うのでしょう。あなたは、一ヶ月と約束したではないか。だから、一ヶ月待って来たのです。」
「なんておろかなんでしょう。私は8+2=10、7+3=10、6+4=10と言ったでしょう。20日も過ぎているではありませんか。もう遅すぎます。私は他の人と結婚する約束をしてしまいました。あなたと結婚することはできません!」
 そういわれてサンピックは気を失いそうでした。でも、インタイのあまりの美しさにどうしてもあきらめきれません。しかし、インタイはこう言いました。
「間違ったのですから、出ていってください。20日も遅れてきたのだから。私は10日と約束したのですから。私は2+8=10、6+4=10、8+2=10とね。」
 泣いて頼んだけれどインタイに聞き入れてもらえません。サンピックはしかたなく家に帰ったのです。

 サンピックはインタイに手紙を書きました。「私が死んで、埋められたら、どうか墓参りに来てください。」と。
 そして、サンピックは悲しみのあまり本当に死んでしまい、お墓が建てられました。インタイはサンピックの願いどおり、夫のマチュンとお墓まいりにやって来ました。マチュンは少し離れて立っていましたが、インタイはお墓の近くまできて、こうささやきました。
「かわいそうに死んでしまって、私の夫になれないまま」すると、お墓が割れて、中から花が現れたのです。インタイが覗こうとすると、そのまま墓の中に飲み込まれてしまいました。墓は閉じてしまい、インタイはいっしょに死んでしまいました。
 マチュンは狂ったように「ワァーワァー」と泣き叫びました。マチュンは、お墓を掘り返すように命じました。いくらでも報酬は払うからと。
 墓を開けると、中から二匹の蝶が出てきました。インタイとサンピックの魂が。それを見たマチュンは気がふれてしまったのです。
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木の彫像と愛を交わした娘像 クランの祖先

愛の神スマラが一人残された娘を結婚できるようにしたお話し

 世界の山々と基本方位が創造され、木や果物や花が生まれたのち、神々は赤土から四人の人間を造りだし、彼らに働く道具と住む家を与えた。最高神であるバタラ・シワは、次に男たちの妻として四人の成熟した乙女を造った。愛の神バタラ・スマラは、女たちが妊娠するように交合を楽しいことにしたので、やがて四組の夫婦はたくさんの子どもたちをもうけた。117人の男の子と118人の女の子で、成長しておとなになると結婚して子どもをもうけた。
 しかし、夫のない娘がひとり残った。心破れて娘は森に行き、シワが手慰みに人間そっくりに彫り上げたナンカの木の切り株を見つけた。娘は木の彫像と愛を交わし、身ごもった。
 娘を気の毒に思ったスマラは彫像に命を与え、この娘も夫を持てるようにしてやったので、この夫婦はガトゥウェルというクランの祖先となった。
※このクランのトーテムはナンカの木なのである。
 ナンカ Nangka=パラミツ。パラミツはクワ科パンノキ属の常緑高木。和名は波羅蜜であるが、ほかに南果呼ばれ、同属異種のパンノキとの対比で、パラミツの木を長実パンの木(ながみぱんのき)とも呼ぶ。英語で、ジャックフルーツと呼ばれ、果樹などとして栽培されている。
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ジャヤ・パングスとカン・チン・ウィーの物語 バロン・ランドゥンの起源

王様と中国の姫と湖の女神

 バトゥール山北側の外輪山の森に、王国がありました。ジャヤ・バングス王は、乗っていた船が難破してバリ島に流れ着いた中国大商人の娘、カン・チン・ウィーの美しさに驚き、妃にすることを望んだのです。
 その後、二人は夫婦となり幸せな結婚生活をおくっていましたが、残念なことに子宝に恵まれません。そこで王は、瞑想と修行のために独りでバトゥール山へ山籠もりに行きました。ところがその地で、王は湖の女神、デウィ・ダヌと出会います。デウィ・ダヌに誘惑され、自分は独身だとウソをついた王は、女神と恋仲になって子供まで授かります。
 王妃カン・チン・ウィーは長く戻らない夫を心配して、バトゥール山へ探しに行きました。そこで、夫と女神、その息子が一緒にいるところを見つけ驚嘆します。王妃だけではなく、デウィ・ダヌも自分が騙されていたことを知って驚きます。女神の悲しみと怒りを納めるにはジャヤ・パングス王を湖の生贄にするしかありません。それを知った王妃カン・チン・ウィーは王と一緒に生贄となることを選びました。

 国王と王妃が亡くなったことを悲しんだ王国の国民は、二人の姿に似せた人形を作って祀るようになりました。これが、バロン・ランドゥン(村に疫病などが流行しないように見守る村の神様)の起源です。王様とお妃は、現在も儀式などで見られるバロン・ランドゥンとなり、バリ人に敬意を払われる存在となったのです。
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マヤ・ダナワとダルム・ブダウル

征服者に滅ぼされて当然の者と伝承されたペジェンの王のお話し(双子が忌み嫌われたわけ)

 むかしむかし、偉大な山、グヌン・アグンがつくられたばかりのころのことである。荒々しく恐ろしいドゥチャ、すなわちマヤ・ダナワが地上で勢力をふるっていた。彼は、神々を妬み、人々が供物を捧げることを許さなかった。神々はこの悪魔と戦おうと手を組み、戦争が起こったので、多数の人々が死んだ。

 とうとう、バタラ・インドラがマヤ・ダナワを打ち負かしたが、殺すにあたって彼が考えたのは生き返らせて男と女の部分に分け、バリの最初のラジャにしようということだった。悪魔の霊はココナツの花の中に入れられ、グヌン・アグンの山腹に神々がやってきて、これを祝福した。そして、ココナツの花の中から男と女のふたりの子どもに生まれかわらせた。彼らはムスラ・ムスリと呼ばれた。

 男の子と女の子は結婚して子どもをもうけたが、それはまた双子であった。子どもたちはペジェンを治め続けた。この双子も結婚してまた双子を産み、ムスラ・ムスリの七代目まで、これを繰り返した。最後の双子の兄は色が黒くて醜い妹を嫌い、踊り子と結婚した。ここで、王家の双子の血統は途絶えてしまった。

 この最後の双子の片割れは大魔力を授けられて生まれた。家来に自分の首を切り落とさせ、それを元どおりにつけさせることができた。しかし、ある日、頭が河に落ち、突然の洪水の激流に押し流されてどこかに行ってしまった。困り果てた家来は豚の頭を切り落とし、それを王の肩の上に載せた。王はそれ以来高い塔の上に住まなければならなくなり、家来たちに自分を見上げることを禁じた。しかし、このことを知らずに通りかかった小さな男の子が見てしまい、豚の頭をした王の話を広めてしまった。それで、王はプダウル、つまり頭を取り替えた人として知られるようになった。

※マヤ・ダナワは、ティルタ・ウンプル寺院の聖水伝説でインドラ神に殺された魔王。
※豚頭王ダルム・ブダウルはマジャパイトがバリに侵攻した時に滅亡したペジェンの王といわれている。
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シンガサリ王国と魔法のクリスの物語

魔法のクリスが国をつくり国を滅ぼすまで

 トゥマペルのただの農民の子であったケン・アロッは家出をして盗賊や賭博師の一味に身を投じたが、その連中から教わることを教わってしまうと、彼らの物を盗んで逃げ出した。彼は強盗やら強姦やら、悪事の限りの暮らしを送っていたが、その人柄と美貌のせいでいつもかくまってくれる人を見つけることができたのだった。

 そして、ある日、ウィシュヌ神の子孫だと名乗る偉いブラフマナ(祭司)、ローガウェと出会った。ローガウェはケン・アロッにすっかり参ってしまったあげく、彼を養子にして宮廷に入れ、トゥングル・アムトゥン王づきの職務につけた。この王の妻は美人でケン・デデスといい、子宮から神々しい光がさしているので、デウィ・スリ神の生まれ変わりといわれていた。彼女はブラフマナの娘で、彼女を盗んだ王より高いカーストに属するため、恥をかかされた父親は王がクリスで死ぬようにと呪っていた。
 
 ケン・アロッはひとめでケン・デデスに恋をしてしまったが、彼女の方もそうだった。ブラフマナ仲間はこれを復讐のよい機会だとみて、ケン・アロッにケン・デデスをものにした者が世界をわがものにするのだと吹き込み、彼女と愛を交わすようにそそのかした。そして、ケン・アロッが王を殺してケン・デデスと結婚しようと決めたときにも、止めようとはしなかった。

 志を胸に秘めたケン・アロッは、鍛冶屋の中でももっとも名高くそのクリスは最初のひと突きで人の命を奪うというムプ・ガンドリンに魔法のクリスを注文した。鍛冶屋はクリスを完成させるのには6か月欲しいといった。その期間が過ぎるとケン・アロッは待ち切れず、クリスをとりに来た。クリスができあがっていなかったため、かんしゃくを起こしたケン・アロッはそのクリスで鍛冶屋を突き刺した。死ぬまぎわにムプ・ガンドリンはケン・アロッを呪い、お前はまさにこのクリスで死ぬことになるであろう、その上、子も孫もこのクリスで死ぬことになるであろうと言った。
 
 ケン・アロッはそのクリスを親友のクボ・イジョに貸したが、この友人はクリスに夢中になり、どこへでも携えて行っては自分のだと自慢した。ある夜、ケン・アロッはクリスを友人から取り返し、王を殺すと、遺体のそばにクリスを置いておいた。クボ・イジョは殺人の罪で起訴されそのクリスで殺された。
 こうしてケン・アロッはケン・デデスと結婚できたが、彼女は夫を殺したのはだれか知っていた。この結婚が可能となったのはブラフマナたちがケン・アロッの先祖は神だと言明したためだった。結婚式はケン・デデスが亡き王の子を産む前であるにもかかわらず、とりおこなわれた。
 
 その子が生まれると、ケン・アロッはアヌサパティと名づけ、自分の息子として育てたが、年のいかぬ王子はいつもケン・アロッに対して本能的な嫌悪感を抱いていた。ケン・デデスはケン・アロッとのあいだに4人の子どもをなしたが、彼はケン・ウマンという2番目の妻をめとり、その間にトージャヤという子ができると、その子がお気に入りとなった。
 ケン・アロッはしだいに勢力をもつようになり、トゥマペルの王(ラジャ・トゥマペル)を名乗ると宣言した。この称号はそれまであえて名乗ろうとする人のいなかったものだった。トゥマペルを領土に含むシンガサリ王国の王に屈辱を受けたブラフマナたちにそそのかされたケン・アロッは王に対し戦いを挑み、その軍隊をせん滅したので、王は全随臣とともに自殺を遂げてしまった。ケン・アロッはシンガサリの最高支配者となり、名前をラジャ・ラジャサと改めた。
 
 しかし、彼の治世は7年しか続かなかった。ケン・デデスは彼にうんざりしてきて、ある日、息子のアヌサパティに、彼の出生の秘密と、ケン・アロッがどうやって彼の父親を殺したのかを打ち明けた。アヌサパティはかの名高いクリスをケン・デデスから手に入れ、召使いを使って、食事中のケン・アロッを背後から突き刺させた。
 
 アヌサパティはアヌサナタ王となった。だが、異母兄弟のトージャヤは彼を嫌っていて、ある日、闘鶏をめぐって激高して父のクリスをアヌサパティから奪い取ると、それで彼を殺してしまった。
 トージャヤが王となると、ケン・アロッの二人の妻の息子たちの間に確執が続いた。アヌサパティの息子たちがトージャヤに対し謀反を企てたが、発覚し、殺されてしまった。
 その後、反乱がおこって、トージャヤが輿に乗り逃走するとき、輿かつぎの一人が腰布を落として、素っ裸になってしまった。王が大笑いしたので、その輿かつぎはかっとして王のクリスをつかむと、それで王を殺してしまった。
このクリスの物語は鍛冶屋の呪いがすべて果たされるまで続くのである。
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バリ人の世界観

バリ島は亀の上に乗り、亀は海に浮かんでいる

 あらゆるもののいちばん下には磁鉄がある。けれども、初めには何もなかった。無であり、空間のみがあった。 天の存在する以前に大地はなく、大地のないときには空もなかった。瞑想によって、宇宙の蛇神アンタボガ亀神ブダワンを創造した。 その背には世界の礎として二匹のとぐろを巻いた蛇が乗っていた。 世界亀の上には覆いとして黒岩が置かれた。太陽はなく、月もない。 下の洞窟の中(岩の下)では夜というものがない。これが黄泉の国である。 ここの神は男神バタラ・カラと女神ステイヤラである。大蛇バスキもまたここにいる。
(パドマサナの土台は、この世界観を表して、ブタワン神と蛇神が造られます。)

 カラは光と母なる大地とを創造した。その上に水の層が広がった。さらにその上にいく層もの天蓋、つまり空があった。 ひとつは泥の層で乾いて平地と山とになり、その上には「からっぽの」中空(大気)があって、そこにイスワラ神が住んでいる。 さらにその上には楚良が浮かび、雲があり、愛の神スマラがいる。さらにその上には「暗い」(青い)空があり、そこに太陽と月がある。 ここにスーリヤ神のいるところである。 これが太陽や月が雲よりもたかいところにいる理由である。 その上はかぐわしい空で、美しく珍しい花々が咲き、人に似た顔をもつチャッという鳥や、脚と翼をもつ蛇タクサカ、流れ星のアワン神がいる。 さらに高いところにはグリシン・ワヤンという「祖先の燃えさかる天」がある。 そして、あらゆる空のさらに上には偉大な神々がいて、天の精霊を見守っている。
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大地の始まり~四方向神のゆわれ(プルワカ・ブミ)

四方向神とシワ神はこうして生まれた

 虚無の神、サン・ヒャン・ウィディは形も色もなく、また、限りのない存在だった。語り合う仲間もいないので、サン・ヒャン・ウィディは神々を創造したいと思った。まず、サン・ヒャン・ウィディの骨からニ・チャンティン・クニンという女神が生まれた。この女神はまたウマとも呼ばれた。
 次に、皮膚からクルシカという男神が生まれた。その色は、白であり、イスワラ神と呼ばれた。次に肉からはガルガが生まれた。その色は赤であり、ブラフマ神と呼ばれた。次に、メトリが生まれた。その色は黄色であり、マハデワ神と呼ばれた。次にも、男神サン・クルシアが生まれた。その色は黒で、ウィスヌ神と呼ばれた。
 さらに、男神が生まれた。サン・プルタンジャラである。その色は五色でシワ神と呼ばれた。

 サン・ヒャン・ウィディは四柱の神々に世界を創造せよと命じたが、クルシカ、ガルガ、メトリ、クルシアはできないと答えた。自分の命令が聞かれなかったのに怒ったサン・ヒャン・ウィディは、「クルシカは悪鬼に、ガルガは虎に、メトリは蛇に、クルシアは鰐になれ」と呪った。彼らは四方に散り、再びサン・ヒャン・ウィディに会うことは許されなかった。
そして、この四柱の神々は四人のブタ(悪鬼)と呼ばれるようになった。

 残った二人、ニ・チャンティン・クニン(ウマ神)とサン・プルタンジャラ(シワ神)は、ニニ・パトゥックとカキ・パトゥックと呼ばれ、ガンジス河を創造し、身体から塩を出してガンジス河に入り、海を創造した。天空の神を日除けとして大地の女神が現れた。「大地よ、イブ・プルティウィ(母なる大地)が汝の名である。」「空よ、バパ・アカサ(父なる空)が汝の名である。」こうして宇宙が創られた。

 さて、四人の兄弟がサン・ヒャン・ウィディのもとにやってきて許しを求め、呪いが解かれた。クルシカは東に戻り、イスワラ神となってインドラ界に住み、ガルガは南に戻り、ブラフマ神となってブラフマ界に住み、メトリは西に戻り、マハダワ神となって、スワルガ界に住み、クルシアは北に戻り、ウィスヌ神となってウィスヌ界に住んだ。
 神々の師匠(グル)として、シワ神はブタラ・グルの名を受け、五人の神々はそれぞれの位置につく。
 シワ神とウマ神はアルダナレスワリ(半男性半女性)となった。

 イスワラ神、ブラフマ神、マハダワ神、ウィスヌ神は神々の支配者であるブタラ・グルに従うことを許されるだけであって、サンヒャン・ウィディに会うことを許されなかった。
 そして、山、稲、木、人、雨、火、魚、鳥、四足の獣、世界を満たすものすべてが創造された。
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乳海の撹拌

不死の霊液を阿修羅と神々が奪い合ったお話し

 女神ディテイの息子、ダイティヤたちと女神アディティの息子、アーディティヤたち(阿修羅)は不老不死になりたいと願った。彼らは「乳海を撹拌して、甘露の霊液、アムリタを手に入れよう」と思いついた。
 そして、竜王バスキを綱として、マンダラ山を棒として、乳海を撹拌し始めた。千年たつとバスキは猛毒ハーラーハラを吐き始めた。その毒により阿修羅や神々、人間たちを含めて全ての世界が被害を被った。神々はシヴァ神に助けを求めた。
そこにヴィシュヌ神が現れ、シヴァ神に毒を供物として受けとるようにいった。シヴァ神は恐ろしい毒を甘露のように飲み干し、立ち去った。
 
 それから、神々や阿修羅はみんなで再び乳海を撹拌した。すると、撹拌用の棒にしていたマンダラ山が海底に沈ずみこんだ。神々はヴィシュヌ神に山を引き上げてくれるように頼んだ。ヴィシュヌ神は亀の姿になり、海に入り山を引き上げて、中央に立ちいっしょに乳海を撹拌し始めた。 
 さらに千年経つと最良の馬、宝石、天女たちが現れ、天界の医神ダンヴァンタリが最高の不死の霊液・アムリタを壺に入れて現れた。その時、アムリタを我が物にしようとする戦いが巻き起こった。ヴィシュヌ神は人の心を惑わす魔女マーヤーの姿になり、阿修羅たちから不死の霊液を奪い取った。アルリタを奪ったヴィシュヌ神に戦いを挑んだ者はすべて壊滅した。 
 この大戦争で、アーディティヤたちは、ダイティヤたちを殺した。その後、インドラ神は王国を取りもどし、全世界を統治した。
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カラ・カウと聖水 日食や月食の由来

トヤ・アムルタを盗み飲んだカラ・カウのお話し

 悪霊のカラ・カウがあるとき好奇心から天国を覗いてみようとやってきた。そこで、アムルタ(不死の霊薬:聖水)の壺を見つけ、神に見られているとは知らず、それを盗んで飲もうとした。 しかし、ウィシュヌが見ていて、ただの一撃で悪魔の頭を切り落としてしまった。 カラ・カウはアムルタを一口、口に含んではいたが、飲み込む時間はなかったので、体は死んだが、頭は生き続けた。 今では彼がこの仕返しのために太陽や月を飲み込むと、日食や月食になるのである。
 このため、日食や月食が起こるとバリ人はこわがって、だれかれも家から出て、クルクル太鼓やブリキ缶やドラムや銅鑼(ゴング)をたたき、できる限り騒々しい音をたて、 体のない頭だけのカラ・カウを脅かし、脅かされている太陽や月を助けようとするのである。
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バタラ・カラの誕生 ウサナ・ジャワの物語より

破壊者シワ神と維持者ウィシュヌ神 バタラ・カワ誕生物語

 シワ神が倫理も道徳基準もないまま人間を創造したので、人間は裸で歩きまわり、洞窟に住み、宗教も持たなかった。彼らは木の下で交わり、子どもを放りっぱなしにしてめんどうを見ず、なんでも見つけたものを食べて、けだもののように生きていた。
 このためシワはひどく怒り、値打のない人間どもを滅ぼす息子を創造しようと決意し、妻のウマ神との交わりの最中にこれを打ち明けた。妻は憤慨して身をひき、争っているまにシワの精液が地面に落ちた。
 それでシワは神々を招集し、精液を指さして、もしもこれが生命を育むなら、その結果は神々に大変な困難をもたらすだろうと告げた。心配した神々は矢を射はじめたが、最初の矢がささったとたん、精液は大きくなって両肩となり、第二の矢がささると両手両足が出て、 矢を射つづけているうちに一滴の精液が山のような大きな恐ろしい巨人になった。巨人は、その飽くことを知らぬ空腹を静める食べ物を欲しがった。シワはこれをカラと名づけ、地上に下らせた。
 そこで彼は毎日存分に人間を食べることができたので、人類はあっという間に減ってしまった。ヴィシュヌ神は心配して、人間を救うためにインドラ神の協力を求め、人間に法や農業や芸術を教えるための神を何名か送り、必要な道具を与えて、人間を文明化しようと決めた。

 (※ 海辺でシワ神とウマ神が散策中に、シワ神の精液が海に落ちてバタラ・カラが誕生したという伝説もあります。このお話では、カラが魔人から人を食べないように変わっていく過程が描かれています。)
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カンダ・ウンパッドのいわれ (人間とともに生まれてくる守護神・四兄弟)

カンダ・ウンパッドはその人を守り、その人とともに成長する

 人はこの世でひとりで生まれてくるのではない、とバリ人は考えている。必ず、四人の者と一緒に生まれてくるのだと。
そして、人が死ぬまで、その4人もこの世にいて、その人の人生に力を及ぼしてくる。その四人のことをカンダ・ウンパット(四兄弟)と呼んでいる。生まれてから死ぬまで、ひとりの人間のために、いくつもの儀式が重ねられるけれど、それもカンダ・ウンパッドの力を借りるためのものだ。カンダ・ウンパットは東西南北に住んでいるから、どの儀式でも四つの儀礼がそれぞれの方角で、水や火などを使って行われる。

 人が赤ん坊から大人になっていくように、カンダ・ウンパットもやがてカンダ・ウンパット・ブタ(それぞれの名前はアンガパティ、バナスパティ、バナスパティ・ラジャ、ブラジャパティ)と呼ばれる段階に成長する。普通の人のカンダ・ウンパットはここまでだが、修行を積めばその人のカンダ・ウンパットはさらに成長して、カンダ・ウンパット・サリ(それぞれイスワラ、バラヌマ、マハディワ、ウィスヌ)と呼ばれる神さまになる。

 カンダ・ウンパットのいわれについては、こういう話がある。
かつて人間が心というものを持たず、けもの同然の生き方をして、世の中に秩序というものがなかったころ、人間に正しい生き方をさせるよう命を受けたシワ神は、その任務を果たすために、成就のあかつきにはお礼をするという約束で、四人の神々に手伝いを頼んだ。その四神がイスワラ、ブラフマ、マハディワ、ウィスヌだった。
 そして、シワ神は他の四神とともに地上に降りたが、その間に約束したことをすっかり忘れてしまった。そこで、四神はシワ神を残して、めいめい東西南北の方角へ去っていってしまった。

 生まれてきた人間の赤ん坊がシワで、一緒に出てきた血と胎盤と羊水とへその緒がカンダ・ウンパットの最初の姿とされている。この四つは黄色いヤシの実に入れられて土の中に埋められる。約束を忘れてしまったシワ、つまり子どもを、それでもどうか守って下さるよう、助けて下さるようにお願いすることから、バリ人の一生は始まる。

※これら四神は方位神。イスワラ神-カギン・東、ブラフマ神-クロッド・南、マハディワ神-カウ・西、ウィスヌ神-カジャ・北 
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アハーリヤーとインドラ神

羊の睾丸を持つ者となったインドラ神

 ミティラーに聖仙ガウタマと妻アハーリヤーが住んでいた。ある時、聖仙がいない時間にインドラ神が聖仙の衣服をつけて現れ、マハリヤーに情交を迫った。マハリヤーはインドラ神の変装だと知ってはいたが、神の情欲に誘われ愛欲を楽しんだ。欲望が満たされたアハリヤーは夫が戻る前に急いで立ち去り、夫の怒りから自分の身を守ってくれるようインドラ神に頼んだ。
 ガウタマ聖仙の怒りを恐れるインドラ神が庵を足早に立ち去ろうとした時に、聖仙ガウタマが戻ってきた。聖仙は怒って、顔色を失ったインドラ神に、睾丸なき者となれ、と呪詛した。インドラ神の睾丸はたちまち地上に落ちた。自分の妻には姿なき者として、数千年ここで苦行しろと言った。
 インドラ神と神々は祖霊神の元に行き、睾丸をインドラ神に与えるよう訴えた。祖霊神は、供物にされる羊の睾丸を引きちぎりインドラ神にくっつけた。この時以来、神々は睾丸なき羊を食べるようになり、インドラ神は羊の睾丸を持つ者となった。
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シヴァ神の4面の顔、インドラ神の千の目

神様も美しい天女は見たいというお話し

 昔スンダとウパスンダという阿修羅がいた。二人は何をするにもいっしょに行っていた。兄弟は三界を征服しようと企て激しい苦行を行った。彼らの苦行をみた梵天は、「三界に存在するすべてのものからの危険がないよう」にという阿修羅の願いをかなえてやった。二人の悪魔は無敵となり、あらゆる地で狼藉を働き、征服していった。神々すらも彼らにかなわなかった。仲間を多数殺された聖仙たちは梵天のところに行き、解決してくれるように願った。

 梵天(ブラフマ神)はヴィシュヴァカルマン(創造神)を呼び「誰からも求められるような美女を造りなさい」と命じた。彼は諸々の宝物から完全な容色の天女を創造した。

 梵天は天女に阿修羅の兄弟を対立させるように命じた。
 彼女は「かしこまりました」といい、集まっていた神々の集団を右まわりに回って敬礼していった。シヴァ神は平静さを保って南側で東方を向いて座っていたが、彼女が右脇を通った時に、どうしても見たくなり南側に別の顔が出現した。そして、彼女が回るうちに東・西・南・北に四面の顔を持つようになった。インドラ神にも側面、背面、前面にと赤い大きな千の眼が生じた。

・・・この後、阿修羅は天女を我が物にしようと兄弟で戦い、二人とも死亡してしまった。
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ガネーシャの象の頭と一本牙

ガネーシャの頭はなぜ象の頭なのか

 パールヴァティーとシヴァが夫婦でヴィシュヌに祈りを捧げて息子ガネーシャを得ました。そして、生まれた息子を自慢しようと神々を呼んだのです。祝福にやってきた神々の中で、シャニィ(土星)が常に下を向いていました。シャニィは、彼が見ると見られたものが死ぬという呪いをかけられていたのです。
 それを知らないパールヴァティーは彼に遠慮せずに息子を見るよう勧め、シャニィが一目赤ん坊をみたとたんに赤ん坊の首が落ちてしまいました。ヴィシュヌは、嘆き悲しむパールヴァティーのためにガルダに乗って飛び立ち、最初に出会ったのが川で寝ている象でした。ヴィシュヌはその首をガネーシャの頭として取り付けました。

 ガネーシャの牙が一本なのには、こんな話しがあります。
 ある時、シヴァの高弟のパラシュラーマが会いにきたところ、父が眠っているからとガネーシャが断りました。そこで、激しい争いが起こり、パラシュラーマがガネーシャに斧を投げつけたのです。ガネーシャはその斧が父シヴァの武器であるのを知り、牙で受けたためにその牙は折れてしまいました。それから彼はエーカダンタ(一本の牙)と呼ばれるようになったのです。
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海外旅行でドイツ・フランス・ベルギー、バリ島、シンガポールを訪れました。
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