絵画・文学・哲学等
2014年9月29日 15時36分40秒 (Mon) 『みみずのたはこと』を知っていますか

今年に入ってからも結構な冊数の本を読みました。最も好きなジャンルはドイツ文学の古典になるんですが、ほかにも推理小説やSFも大好きですし、ライトノベルなどにも手を伸ばしています。
で、今回は今後の日本文学に残すべき一冊である『みみずのたわこと』を紹介してみようと思います。
作者は徳富健次郎(徳富蘆花)。明治~大正期の作家です。ジャーナリストとして有名だった徳富蘇峰の弟で、有名な作品としては『不如帰(ほととぎす)』などが挙げられ、いわゆる「家庭小説」と呼ばれる、身近な出来事を写実的に描く小説家として知られています。
『みみずの~』は健次郎の身辺の生活を記した随筆です。写実主義の作家らしく、天気や野菜、人物の描写が細かく生き生きとしています。その筆力によって、当時の生活の様子を新鮮なままパックしてしまったような作品です。細かく新鮮な描写は、ときに幻想的にも感じられてしまうほど。これは健次郎と私が生きている時代(日常、頭を通過する情報)が違うせいもあるかもしれません。何より素晴らしいのは、日常生活において発生する些細な出来事が、作者の心情を通ってドラマとして生きている点でしょう。生きていることってよく注意してみれば、それ自体がドラマなんだなと気づいて、はっとします。太宰治は健次郎の作品を耽読したといわれていますが、非常に納得がいきます。
この作品を知るきっかけは、祖父が読んでいたことがあるというのを母から聞いたことでした。おもしろいタイトルだったので頭の中にそれが残っており、書店で見つけたときに好奇心で買ってみたのでした。高校生か大学生の頃です。祖父は農家で、身長が高く、顔はピカソに似ています。健次郎は「美的百姓」という生き方を実践しようとした人物で、美的な面から「農」と人間の生活を見つめ直そうとする部分に祖父も興味を持ったのかもしれません。
とにかく濃密な作品です。健次郎はトルストイを訪問し、キリスト教に入信していたこともあって、(油絵を学んだ日本画家のように)西洋的な観察眼も備えていたため、和洋問わず、ある程度文学作品に触れた人ならのめり込める作家です。要するに本当はもっと多くの人間に読まれるべき作家なんです。でもなかなか積極的に取り上げるだけのセンスを持った人間が文学に携わる連中にいないので、ここで取り上げてみました。
今後も「俺が取り上げずに誰が取り上げる」といった残るべき名作たちを紹介していこうと思います。
2014年4月5日 8時55分02秒 (Sat) 大ニュース!デレク・マトレーバーズ新著!!

私は大学で哲学を専攻していましたが、そもそもはこの人の著作『Art and Emotion』(2001)を読んだのがきっかけでした。マトレーバーズはその著作において、人間が芸術作品に感動する(感情を持つ)理由として「喚起理論(arousal theory)」という理論を支持しています。まあ一言で説明するのは難しいのですが、例えばある音楽を「悲しい」と感じるのは、その音楽を受容する者の感覚や認識によるものだとする理論です。そりゃ当たり前だと思うでしょうが、極論すると、絶対的に「悲しい音楽」などというものは存在せず、その音楽が悲しいものになるかどうかは受容者の感覚や認識との確率論的な可能性に過ぎなくなるわけです。
ひとつのリンゴがあったとして、それを「赤い」というには、その色彩を受容する私自身の感覚や認識に従うよりありません。なぜならある人にとってはその「赤い」は「青い」かもしれないからです。そのある人は私自身にとって「青い」感覚や認識を「赤い」と呼んでいる可能性があるわけです。このあたりの話は「クオリア」の問題でよく出てくる話ですが。つまり絶対的に「赤い」と指示し得る「もの」は存在しないわけです。
音楽やリンゴは現実世界では「もの」になります。それに対して「悲しい」や「赤い」は「もの」ではなく我々自身の「感じ」であり「言葉」であるものです。その関係性を矛盾なく捉え、説明しようとする試みが喚起理論だと考えてもらえればいいでしょう。
amazonの内容紹介によると、新著においてマトレーバーズは「想像」と「フィクション」の相異について論じているようです。私も卒論でその辺りの問題に少し触れたので、非常に興味をそそられます。
共著は何冊か出ていますが、マトレーバーズのみの著作としては13年振りになるであろうこの新著。私にとっては昨年の10年振りのデヴィッド・ボウイの新作以上の大ニュースです。英語OKな人は哲学辞書片手に是非ご一読を!!!
2013年10月21日 10時45分22秒 (Mon) ミケランジェロ展

彫刻の展示はあまり多くなくて残念だったのですが、ミケランジェロが書いた手紙や素描が数多く展示されており、興味深かったです。手紙の筆跡は、整然としながらも柔らかさのある、美しい字でした。イタリア語がわかればもっと楽しめたんでしょうけれど。でまた逆に、教皇クレメンス7世からミケランジェロに宛てられた手紙というのも展示してあって、これがまた美しい。教皇自身の手による字はそれほど綺麗でもないんですが、教皇の言葉を代筆した人物(書記官?)の筆跡が素晴らしすぎる。ミケランジェロの字よりも美しかったです。まあ教皇の代筆ということで、並々ならぬ緊張感の下で書かれたためでもあるんでしょうが、感動さえ催します。これも芸術かも。
また、システィーナ礼拝堂内部の『最後の審判』を撮影した10分程度のフィルムが上映されていました。なんでも「4Kカメラ(超高画質カメラ)」による初の映像らしく、非常に美しい映像でした。壁の小さなひびまではっきり映されています。多分、現地で肉眼で見るよりもはっきりと見えます。迫力ありましたよ。
※画像はミュージアムショップで購入したグッズです。
2013年4月18日 15時45分17秒 (Thu) 河鍋暁斎記念美術館

館内では季節ごとにテーマに沿った絵が展示されているようで、私が行った時は「暁斎一門が描く美人画」展でした。とくに印象に残ったのは「美人達磨戯画」ですかね。悟りを開いたはずの達磨が美女を相手にニヤけている画です。ほかにも四季を描いた屏風の中で猫を抱いている女性や、花見の席で老婆と戯れる美女たちなどの画がありました。
訪問したとき、来館者は私一人だったので、随分ゆっくり観て回ることができました。館内には今まで出版された暁斎の画集や研究書などが置いてあり、何冊か手にとって読んだりしてました。暁斎は風刺画を中心に蛙をよく描くためか、蛙の本もたくさんありましたね。「カエルタイムズ」という名のサークル誌もあったり・・・。
帰りは喫茶店にもなっているミュージアムショップでお土産をたくさん買ってしまいました(写真)。
2011年7月11日 21時05分15秒 (Mon) 山田かまち水彩デッサン美術館

私が高校生の頃、母がかまちの画集をプレゼントしてくれて以来ずっとかまちのファンで、美術館にも一度は行ってみたいと思っていました。忙しくて長い間先延ばしになっていたのですが、ようやく念願叶いました。直接作品を見ることができて本当によかったです。知らない作品も何点かあり、新たな感動を与えられました。とくに「青い自画像」がよかったです。また、美術館の二階にはかまち愛用のエレキ・ギターも展示されており、これにもなんともいえない気持ちを喚起されました。かまちは作曲もしていたんです。また、詩や手紙も何点か展示されていました。かまちが恋した女の子に送った手紙の中から注目に値する一節をここに紹介させていただきます―「理性は感情という器の中に入っている」。
プロフィール
- ニックネーム
- tana
- 性別
- 男性
- 自己紹介
- はじめまして。tana(ターナ)と申します。
ボーカロイドを用いた楽曲をはじめ、シンセ・ポップ、テクノ、アンビエントなど、電子音楽を幅広く制作しています。ジャンルを横断しながら、音の質感や空気感を大切にした作品づくりを行っています。 - 好きなアーティスト
- ブライアン・イーノ、クラフトワーク、ピンク・フロイド、ブラック・ドッグ、デヴィッド・ボウイ、エリック・ドルフィー、バッハ、シューベルト、ジャン・クリストフ、初音ミク等。
- 注意事項
- tnd musicは各種アフィリエイト・プログラムに参加しています。
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