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2016年7月18日 10時32分50秒 (Mon) エリック・ドルフィー(6/18発表 7/18改訂)

エリック・ドルフィー(6/18発表 7/18改訂)
ここ2~3年コレクションし続けているエリック・ドルフィー。
現在、ダントツで最も好きなジャズ・フルート奏者である。アルトサックス、バスクラリネットも達人。
蛇足を覚悟で文学作品に例えるなら、ビル・エヴァンスが「泉鏡花」だとして、ドルフィーは「幸田露伴」といったところだろうか。これらの作家は作品のストーリーがどうこうというよりも、その文体の持つ独特な雰囲気を味わいたくて繰り返し読んでしまう。そうした点がジャズの楽しみ方に似ている。いや、本当に蛇足だが。

さて、玄妙・怪異な印象故に聴き手を選ぶともいえるドルフィーの演奏だが、基本的にはビバップだ。当時のジャズの主流を大きく外れたスタイルではない。
それでは一体何がドルフィーの演奏を独特なものにしているのだろうか。
私はドルフィーの演奏を聞くとき、ゲーテや老子を読んだ時に感じる「汲めども尽きざる泉」に迫るものを感じる。自然の奥底と通じているような、宇宙と一体となっているような霊感だ。
36歳で他界してしまったドルフィーは、ジャズ以外にインドやアフリカの民族音楽に深い影響を受けたらしい。また、一説によるとケルトの紋様にも興味を持っていたとか。さらに自宅では小鳥とのセッションを楽しんでいた(!)という(※1)。実際、彼の演奏するフルートは小鳥のさえずりのようだが(※2)。
つまり何が言いたいのかというと、ドルフィーは演奏を通じて自然と一体になることを志向していたのではないだろうか。もちろんネイチャー・ゲームのことではない。大げさに聞こえるかもしれないが、自然の創造性をジャズの即興演奏の中に積極的に取り込もうとしていたのではないだろうか。彼にその自覚があったかどうかは別として、ドルフィーの演奏を際立たせているものはまさにその点であると思う。
「エリック・ドルフィー試論」(※3)において、間章はドルフィーのたどりつこうとしたものは「無名者の名ずけられぬ音の超出的な場所、彼方とこことが激しく異相し交わる不可視の場所」であると述べているが、その場所こそ「自然」であり、「ゼロ」であり「境界」でもある場所だといえる。その場所に存在し奏で続けること。これこそがドルフィーの目的だったといえるだろう。
そしてドルフィーのよき理解者だったコルトレーンも同じような道を探索していた。コルトレーンにおいて上記の「自然」は「神」や「宇宙」といった言葉で表現されている。しかしコルトレーンの場合、当時におけるジャズの既成を崩しながらその道を進んでいくことにこだわった観がなくもない。それによって逆にスタイルに捉われつつあったのではないか。『至上の愛』や『アセンション』はコルトレーン芸術のひとつの到達点だったとしても、その後の彼はどこへ向かえばよかったろう。フリー・ジャズのスタイルに近づくほど「自然との一体化」が増すというものでは決してなかったはずだ。捉え続けるためには確信犯であってはならない。
日本のジャズ・フルート奏者のMIYAは、ジャズの魅力は「瞬間の輝き」であると言う。それは積み重ねた修練故に表現可能な「自然発生的な美」ということもできるだろう。だが無論ここで述べた「自然」は固定的なものではない。永遠に巡る現実の相と重なりつつ常に動いているものだ。

CD化されたドルフィーの作品の内、まだ2/3程度(ドルフィー以外のミュージシャンのリーダー作も含めると1/5程度)しかコレクションできていないが、どの作品もそれぞれに聴く価値がある。この作品だけ聞いておけばいいというアーティストでは決してないのだが、あえて推薦盤を挙げるなら以下の5枚。CDのみの編集盤も含む。

・『OUTWARD BOUND』
・『OUT TO LUNCH!』
・『THE COMPLETE LATIN JAZZ SIDES』(2枚の作品を1枚に収録したもの)
・『ERIC DOLPHY QUARTET IN EUROPE』(2枚組)
・『LAST DATE』(画像)

晩年の傑作『LAST DATE』の最後は、ドルフィー自身の以下の言葉によって締めくくられる。
“When you music, after it's over it's gone in the air, You can never capture it again”
「音楽というものは、一度聞き終わると空中に消え去ってしまい、二度と捕まえることはできない」

・・・この言葉を聞いたとき、「波である光は観測された途端に粒になってしまう」(=光は波と粒の性質を同時に持つが、私たち(観測者)は粒としての光しか見ることができない)という量子力学の仮説を想起した。


※1 ドルフィーについて書かれたものは『エリック・ドルフィー』(シモスコ&テッパーマン 間章訳 晶文社)のみが唯一入手可能な書籍である(絶版だが古本で探せると思う)。大変優れた評伝である。モダンジャズそのものを学ぶのにも大いに役に立つ。
※2 ちなみにドルフィーのアルトサックスは「馬のいななきのようだ」と批評家達に不当に酷評されたことがある。
※3 ※1で紹介した書籍に収録。

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はじめまして。tana(ターナ)と申します。
ボーカロイドを用いた楽曲をはじめ、シンセ・ポップ、テクノ、アンビエントなど、電子音楽を幅広く制作しています。ジャンルを横断しながら、音の質感や空気感を大切にした作品づくりを行っています。
好きなアーティスト
ブライアン・イーノ、クラフトワーク、ピンク・フロイド、ブラック・ドッグ、デヴィッド・ボウイ、エリック・ドルフィー、バッハ、シューベルト、ジャン・クリストフ、初音ミク等。
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