2016年8月20日 17時00分51秒 (Sat) リグ・ヴェーダ

仏教の土台となったウパニシャッド哲学を育む土壌となった、神々や自然への讃歌(祈祷文)を集めたインド最古の宗教文献である。
ゲーテと一緒にいつも手元に置いてあるのだが、何故これ程までに気に入っているのかというと、おそらくアニミズムにおける「カミ」とその後の宗教において擬人化していった「神」との境界がはっきりしていないためだろう。
リグ・ヴェーダの世界観においては、「カミ」の宿る自然とともにある私たちの地上の世界と、神々の住む天上の世界がはっきり区別されていないのだ。
この世界観を雑多なもの・複雑なものと感じる人も多いだろうが、私にとっては非常にシンプルで受け入れやすいものだった。私は神霊や悪魔の世界(あの世)は常に現世(この世)にリンクしつつ存在しており、そのため互いに影響を及ぼし得るものだとも考えている。
そういう思考を促す直観は、なにより幼少期の自然体験に根ざしている。私は自然が豊かな田舎育ちで、空模様や風や雨も含めて自然(人工でないもの)が与えてくれる喜びや気持ち悪さを肌で味わってきた。
また、私は小学生の頃までは広い庭のある祖父母の家で時間を過ごすことが多かった。その庭には祖父が植木として売るために育てていた(が、結局売る機会を逸してしまった)松や牧の木が何十本もあった。私はそれらの木々に名前こそつけなかったが、一本一本に人と同じような「個性」を感じていた。もっともその能力は大人になった今では失われてしまったが、集中しだいで再び取り戻せるものだと期待したい。
そのようなわけで、自然に畏敬を持ったり、自然を擬人化したりする人間の特性はよく理解できるし、今は目に見えていないものも意識の在り方によっては目に見えてくるという理屈も経験から理解できるのだ。おそらくあの世を認識するに至るのも可能なのだろう(ただし、最も重要なのは顕在化しきった現在すなわちありのままの現在を認識することである)。
そこまで至らなくても、自然の原体験がもたらしてくれた感動を追体験させてくれるだけでリグ・ヴェーダは宝だと思う。
自然や神々だけでなく、「賭博者の歌」「害虫を駆除してその毒を消すための歌」「良き懐妊のための歌」など、人間社会の細々とした普遍的な事象を取り上げたものもけっこうあって楽しめる。
画像の岩波文庫版に不満があるとすればタイトルに「抜粋」や「抄」のことわりがないことだ。たとえばガーヤトリーマントラとして知られる[3.62.10]の章句はサヴィトリの歌の箇所で紹介される形をとっている。
これについては良識の高い出版社からいつの日か『全訳 リグ・ヴェーダ』が出ることを願って止まない。
もはや古代の名残はないかもしれないが、一度思う存分時間をかけてインドを旅してみたい。
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プロフィール
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- tana
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- 男性
- 自己紹介
- はじめまして。tana(ターナ)と申します。
ボーカロイドを用いた楽曲をはじめ、シンセ・ポップ、テクノ、アンビエントなど、電子音楽を幅広く制作しています。ジャンルを横断しながら、音の質感や空気感を大切にした作品づくりを行っています。 - 好きなアーティスト
- ブライアン・イーノ、クラフトワーク、ピンク・フロイド、ブラック・ドッグ、デヴィッド・ボウイ、エリック・ドルフィー、バッハ、シューベルト、ジャン・クリストフ、初音ミク等。
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