リリスの嘆き
第三章
蛇の目
ガシャーン。
巨大なガラスが破られたような音が三人の耳に届いた。
森崎が目を向けると、何もないはずの場所から銀色の乗用車が飛び込んできた。
(助けが来た)
三人は一様にそう思った。
その音はアガシャラにも届いていた。
しかし、一瞬何が起きたのかわからなかった。
あの結界を破るものなどいるはずがない。そう思った。
アガシャラは音の下方向に目を向けた。
そこには猛スピードでこちらに向かってくる一台の乗用車があった。
(私の食事を邪魔するのか!)
アガシャらの中に激しい増悪が生まれた。
ハンドルを握る恵は一瞬のうちにこの空間で起こっている出来事を悟っていた。
見たこともない巨大な蛇、その前で怯えている男女の生徒、そして、少し離れたところで大蛇の注意をひこうとしている男性。彼らはこの巨大な存在に抗う術を何一つ持っていない。
助けなければ。
恵の脳裏に電撃が走り、それが彼女の体を駆け抜けた。
壁を破ったとき、ジャンプしていた車がアスファルトを踏むと同時に、恵は急ハンドルを切った。オートマチックのギヤを1段落として、アクセルを踏み込み、エンジンの回転数を挙げる。車はスピンする直前で体勢を戻し、二人の生徒と大蛇の間に割って入った。素早く小島が助手席から飛び降り、ニューナンブの銃口を大蛇に向ける。恵は運転席の窓を下げて二人に向かって叫ぶ。
「早く乗って!」
その声はその場の空気を切り裂く。
小島は確実にこの巨大な生き物の動きが止められるウィークポイントを探していた。いくら銀の銃弾であっても一発でそれを射止められるはずはない。そう悟っていたからだ。では、どこを狙うのが一番効果的なのだろうか。そして、その場所を見つけ出し、銃口をそこに向けた。
孝は叫ぶ女性の姿を見て体を硬直させていた力がすっと抜けたことを悟った。それと同時にこの生き物から逃れられるすべを術が手に入ったことをっ知った。
「和田さん、行こう!」
孝は美佳の手をとって乗用車の後部座席を目指して走りだした。
そんな二人を見てアガシャらの怒りは頂点に達した。このままやすやすと獲物を逃してたまるものか。怒りが体を駆け巡り、同時に全ての筋肉に力が込められていく。あの乗用車さえ破壊してしまえば、彼は狙いを恵の乗る覆面パトカーに向けた。
その様子を見ていた森崎は、カバンから用意していたミラーレス一眼レフを取り出すと、アガシャラに向かってシャッターを切り続けた。連続したストロボの強力な光がアガシャラの目をくらませる。その好機を逃さずに小島が構えた十の引き金を立て続けに引いた。乾いた爆発音が三回、その空間に響く。そして、そのうちの一発がアガシャラの右目を貫いた。
「ぎゃああぁぁ」
この世のものとは思えない叫び声が響く。
それと同時に、孝と美佳が恵の乗る車に飛び込む。
その後部ドアが閉まりきらないうちに恵はアクセルを思いっきり踏み込み、車を森崎の方に向ける。
アガシャラはもんどり打ちながら怒りの矛先を小島に向ける。
小島はアガシャラの見えないはずの目の方に回り込み、再び銃口を向ける。
だが、暴れまわる大蛇に狙いが定まらない。
小島はそれが自分に狙いを定めるのを待った。
恵はシャッターを切り続けている森崎の横に車を止めた。
「あなたも急いで」
恵の声が届くその瞬間に孝が後部ドアを開ける。
森崎は事態を悟るとシャッターを切りながら車に乗り込む。
それを確認した恵は、今度は小島に向けて車を走らせる。
やがてアガシャラの動きが停まる。
それが自分に狙いを定めたことを知ると、小島は引き金を引いた。
銀の銃弾は細かく震えている大蛇に向かって一線に注を切り裂いていく。
一瞬ん判断でアガシャラはそれを避けると、前身に込めた力を一気に開放する。
太く、固い尾が小島に向かって空を切る。
小島は衰えた体でそれを避ける。
銃弾は後一発。
小島は倒れ込みながらもその引き金を引いた。
ニューナンブから発射された銃弾が再びアガシャラの右目を貫く。
アガシャラはその激痛に耐え切れず、左の方向に倒れこむ。
そのとき、恵の車が小島の脇に急停止する。
小島は乱暴にその助手席側のドアを開けると、車の中に転がり込んだ。
五人を載せた車はタイヤの軋んだ時に出す青白い煙を残して、結界に穿たれた穴に向かって走る出した。
巨大なガラスが破られたような音が三人の耳に届いた。
森崎が目を向けると、何もないはずの場所から銀色の乗用車が飛び込んできた。
(助けが来た)
三人は一様にそう思った。
その音はアガシャラにも届いていた。
しかし、一瞬何が起きたのかわからなかった。
あの結界を破るものなどいるはずがない。そう思った。
アガシャラは音の下方向に目を向けた。
そこには猛スピードでこちらに向かってくる一台の乗用車があった。
(私の食事を邪魔するのか!)
アガシャらの中に激しい増悪が生まれた。
ハンドルを握る恵は一瞬のうちにこの空間で起こっている出来事を悟っていた。
見たこともない巨大な蛇、その前で怯えている男女の生徒、そして、少し離れたところで大蛇の注意をひこうとしている男性。彼らはこの巨大な存在に抗う術を何一つ持っていない。
助けなければ。
恵の脳裏に電撃が走り、それが彼女の体を駆け抜けた。
壁を破ったとき、ジャンプしていた車がアスファルトを踏むと同時に、恵は急ハンドルを切った。オートマチックのギヤを1段落として、アクセルを踏み込み、エンジンの回転数を挙げる。車はスピンする直前で体勢を戻し、二人の生徒と大蛇の間に割って入った。素早く小島が助手席から飛び降り、ニューナンブの銃口を大蛇に向ける。恵は運転席の窓を下げて二人に向かって叫ぶ。
「早く乗って!」
その声はその場の空気を切り裂く。
小島は確実にこの巨大な生き物の動きが止められるウィークポイントを探していた。いくら銀の銃弾であっても一発でそれを射止められるはずはない。そう悟っていたからだ。では、どこを狙うのが一番効果的なのだろうか。そして、その場所を見つけ出し、銃口をそこに向けた。
孝は叫ぶ女性の姿を見て体を硬直させていた力がすっと抜けたことを悟った。それと同時にこの生き物から逃れられるすべを術が手に入ったことをっ知った。
「和田さん、行こう!」
孝は美佳の手をとって乗用車の後部座席を目指して走りだした。
そんな二人を見てアガシャらの怒りは頂点に達した。このままやすやすと獲物を逃してたまるものか。怒りが体を駆け巡り、同時に全ての筋肉に力が込められていく。あの乗用車さえ破壊してしまえば、彼は狙いを恵の乗る覆面パトカーに向けた。
その様子を見ていた森崎は、カバンから用意していたミラーレス一眼レフを取り出すと、アガシャラに向かってシャッターを切り続けた。連続したストロボの強力な光がアガシャラの目をくらませる。その好機を逃さずに小島が構えた十の引き金を立て続けに引いた。乾いた爆発音が三回、その空間に響く。そして、そのうちの一発がアガシャラの右目を貫いた。
「ぎゃああぁぁ」
この世のものとは思えない叫び声が響く。
それと同時に、孝と美佳が恵の乗る車に飛び込む。
その後部ドアが閉まりきらないうちに恵はアクセルを思いっきり踏み込み、車を森崎の方に向ける。
アガシャラはもんどり打ちながら怒りの矛先を小島に向ける。
小島はアガシャラの見えないはずの目の方に回り込み、再び銃口を向ける。
だが、暴れまわる大蛇に狙いが定まらない。
小島はそれが自分に狙いを定めるのを待った。
恵はシャッターを切り続けている森崎の横に車を止めた。
「あなたも急いで」
恵の声が届くその瞬間に孝が後部ドアを開ける。
森崎は事態を悟るとシャッターを切りながら車に乗り込む。
それを確認した恵は、今度は小島に向けて車を走らせる。
やがてアガシャラの動きが停まる。
それが自分に狙いを定めたことを知ると、小島は引き金を引いた。
銀の銃弾は細かく震えている大蛇に向かって一線に注を切り裂いていく。
一瞬ん判断でアガシャラはそれを避けると、前身に込めた力を一気に開放する。
太く、固い尾が小島に向かって空を切る。
小島は衰えた体でそれを避ける。
銃弾は後一発。
小島は倒れ込みながらもその引き金を引いた。
ニューナンブから発射された銃弾が再びアガシャラの右目を貫く。
アガシャラはその激痛に耐え切れず、左の方向に倒れこむ。
そのとき、恵の車が小島の脇に急停止する。
小島は乱暴にその助手席側のドアを開けると、車の中に転がり込んだ。
五人を載せた車はタイヤの軋んだ時に出す青白い煙を残して、結界に穿たれた穴に向かって走る出した。
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