踏みにじられた生命
第四章
対決
小島は防戦一方だった。
黒い人物の凶器を避け、恵達の方に気を配っているので、相手に効果的な一撃を加えることが出来なかった。ナイフが闇を切り裂いていくたび、小島は後ずさっていく。背後にある塀が次第に近づいてくる。
一方、黒い人物のナイフは小島の皮膚をかすめてきた。黒い人物は手応えを感じながら小島に迫っていく。
恵は彼等の攻防を目の当たりにしながら、美佳のそばを離れることの出来ない自分に歯がゆさを感じていた。
この状態を何とか打開しなければ。
恵は刑事課にダイヤルし応援を要請した。
追い詰められた小島の背中がついに塀に触れてしまった。,これで逃げ道は左右方向に限定された。それを知った黒い人物はナイフの切っ先を左右に繰り出してくる。小島は体を捻ってかわしていたが、何度目かの黒い人物の攻撃が来た時、それから逃げるタイミングを外してしまった。
黒い人物のナイフが小島の脇腹を深く貫き、充分な手応えを楽しんだ後、それを引き抜く。
焼けるような激痛が小島の体を走る。その衝撃で小島はその場に跪いてしまう。
小島のシャツがじわじわと赤く染まっていった。
「小島さん!」
恵が思わず叫んだ。
その声で黒い人物の注意が恵に向かう。その隙を突いて小島が黒い人物にタックルする。
黒い人物は背後から衝撃を受け、前のめりに倒れ込む。その勢いで持っていたナイフが宙を舞い、路面に落ちる。
すかさず恵が駆け寄り、ナイフを遠くに蹴り飛ばす。
沙保里の注意が黒い人物に向けられた。
『紅い菊』はこのときとばかりに溜め込んでいた念を一気に解放した。念は一直線に沙保里に向かっていき、その体を弾き飛ばす。
体勢を崩した沙保里は溜めていた念を闇雲に解放し、その念は『紅い菊』の右頬を掠めていく。
『紅い菊』の頬に浅い数センチの切り傷が走り、赤い血がじわりと滲んでくる。それをものともせずに『紅い菊』は沙保里の懐に入り込む。
「勝負あったな」
『紅い菊』は笑みを浮かべる。
「いいえ、まだよ」
沙保里はそう応えると最後の念を『紅い菊』の胸元に放つ。
『紅い菊』はその力に押されて数メートル弾き飛ばされた。
その隙を突いて、沙保里は闇の中に消えていった。
体勢を立て直した『紅い菊』は徐々に美鈴に戻っていった。
黒い人物は目標を変え、恵に襲いかかった。固く握りしめた拳を次々と繰り出し恵を追い詰めていく。
恵はそれを何とか躱していくが、何度目かに繰り出された拳が彼女の顎を捕らえ、堪えきれずに倒れ込んでしまった。その上に覆い被さってくる黒い人物の腹部を恵は思いきり蹴り上げ、それが体勢を崩している間に立ち上がって隙のないように身構える。
黒い人物も体勢を立て直すと大きく振りかぶって右の拳を繰り出してきた。
恵はそれをすばやく躱し、目の前に伸ばされたその腕を取ると勢いよく足を繰り出し、黒い人物を投げ飛ばした。背中をしたたかに路面に打ち付けた黒い人物の右腕を捻りあげ、それの半身を起き上がらせた。
「嬢ちゃん、確保だ!」
塀を支えにして起き上がった小島が叫んだ。
恵はスーツのポケットから手錠を取り出すと黒い人物の手首の自由を奪った。
「二十三時十八分、傷害の現行犯で逮捕する」
恵に腕を決められている黒い人物に激痛を耐えながら歩いてきた小島がそれの被っている目出し帽を剥ぎ取った。
黒い人物の顔が晒される。
その顔を見た小島と恵は愕然とする。
それは予想もしていなかった人物だった。
黒い人物は吉田恵子だった。
黒い人物の凶器を避け、恵達の方に気を配っているので、相手に効果的な一撃を加えることが出来なかった。ナイフが闇を切り裂いていくたび、小島は後ずさっていく。背後にある塀が次第に近づいてくる。
一方、黒い人物のナイフは小島の皮膚をかすめてきた。黒い人物は手応えを感じながら小島に迫っていく。
恵は彼等の攻防を目の当たりにしながら、美佳のそばを離れることの出来ない自分に歯がゆさを感じていた。
この状態を何とか打開しなければ。
恵は刑事課にダイヤルし応援を要請した。
追い詰められた小島の背中がついに塀に触れてしまった。,これで逃げ道は左右方向に限定された。それを知った黒い人物はナイフの切っ先を左右に繰り出してくる。小島は体を捻ってかわしていたが、何度目かの黒い人物の攻撃が来た時、それから逃げるタイミングを外してしまった。
黒い人物のナイフが小島の脇腹を深く貫き、充分な手応えを楽しんだ後、それを引き抜く。
焼けるような激痛が小島の体を走る。その衝撃で小島はその場に跪いてしまう。
小島のシャツがじわじわと赤く染まっていった。
「小島さん!」
恵が思わず叫んだ。
その声で黒い人物の注意が恵に向かう。その隙を突いて小島が黒い人物にタックルする。
黒い人物は背後から衝撃を受け、前のめりに倒れ込む。その勢いで持っていたナイフが宙を舞い、路面に落ちる。
すかさず恵が駆け寄り、ナイフを遠くに蹴り飛ばす。
沙保里の注意が黒い人物に向けられた。
『紅い菊』はこのときとばかりに溜め込んでいた念を一気に解放した。念は一直線に沙保里に向かっていき、その体を弾き飛ばす。
体勢を崩した沙保里は溜めていた念を闇雲に解放し、その念は『紅い菊』の右頬を掠めていく。
『紅い菊』の頬に浅い数センチの切り傷が走り、赤い血がじわりと滲んでくる。それをものともせずに『紅い菊』は沙保里の懐に入り込む。
「勝負あったな」
『紅い菊』は笑みを浮かべる。
「いいえ、まだよ」
沙保里はそう応えると最後の念を『紅い菊』の胸元に放つ。
『紅い菊』はその力に押されて数メートル弾き飛ばされた。
その隙を突いて、沙保里は闇の中に消えていった。
体勢を立て直した『紅い菊』は徐々に美鈴に戻っていった。
黒い人物は目標を変え、恵に襲いかかった。固く握りしめた拳を次々と繰り出し恵を追い詰めていく。
恵はそれを何とか躱していくが、何度目かに繰り出された拳が彼女の顎を捕らえ、堪えきれずに倒れ込んでしまった。その上に覆い被さってくる黒い人物の腹部を恵は思いきり蹴り上げ、それが体勢を崩している間に立ち上がって隙のないように身構える。
黒い人物も体勢を立て直すと大きく振りかぶって右の拳を繰り出してきた。
恵はそれをすばやく躱し、目の前に伸ばされたその腕を取ると勢いよく足を繰り出し、黒い人物を投げ飛ばした。背中をしたたかに路面に打ち付けた黒い人物の右腕を捻りあげ、それの半身を起き上がらせた。
「嬢ちゃん、確保だ!」
塀を支えにして起き上がった小島が叫んだ。
恵はスーツのポケットから手錠を取り出すと黒い人物の手首の自由を奪った。
「二十三時十八分、傷害の現行犯で逮捕する」
恵に腕を決められている黒い人物に激痛を耐えながら歩いてきた小島がそれの被っている目出し帽を剥ぎ取った。
黒い人物の顔が晒される。
その顔を見た小島と恵は愕然とする。
それは予想もしていなかった人物だった。
黒い人物は吉田恵子だった。
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